金髪もネイルもツーブロックも今や普通
行きつけのスーパーで「いらっしゃいませ〜」と朗らかな声でお会計をしてくれる店員さん、金髪&毛先はピンク。保育所でお世話になっている子供のクラス担任のベテラン先生、束ねた黒髪ロングからチラ見えする鮮やかなブルーのインナーカラー。学校関係の振込手続きで寄った金融機関の窓口スタッフ、通帳を戻す手には小さなストーンがついたピンク系のきれいなネイル。市内の中学校で最近廃止になった「ツーブロック禁止」の校則。
ここ数年、「身だしなみ」に対する社会の意識や捉え方が変化していることを感じている方も多いのではないでしょうか。女性だけでなく、男性でも「パーマや長髪」「オシャレなひげ」はもちろん、「メイク」も増えてきましたよね。「制限されずに自由にできる!」と喜ぶ方もいる一方、「違和感あるな」「なんとなく受け入れられない…(でも時代の流れだから受け入れなきゃいけないんだよね)」と葛藤している方もいらっしゃるかと思います。
ビジネスでの「身だしなみ」 最近の変化
ビジネスシーンで、身だしなみ「緩和」の転機の1つは、2005年に始まったクールビズではないでしょうか。もう20年も経つんですね。元々は地球温暖化対策の名の下に推進されたクールビズですが、企業やビジネスパーソンが本来求めるべき“よりよい状態で働く”を実現するためには何が快適か?という視点が生まれるきっかけになったように思います。
近年では、就活シーンにおいてはリクルートスーツや黒髪、女性のパンプスなどが問題定義されることが多くなってきました。説明会や面接の際に「ビジネスカジュアルでお越しください」とする企業もあるようです。
また、冒頭に挙げたようにスーパーなどの小売業やアミューズメントパーク、航空業界など、接客・サービス分野の企業においては、従業員の身だしなみを緩和・自由化する取り組みが注目を浴びています。身だしなみが見直された企業においては、その目的として「従業員の個性や多様性を尊重する」「従業員自身が楽しく仕事に従事できる」「無駄や形骸化した慣習を見直して本質を求める」などが挙げられています。今いる従業員の内面にアプローチし、その力を最大限発揮してもらうための環境づくりという側面があるのでしょう。
ビジネスシーンでの「身だしなみ」のかつての常識は、今の非常識になりつつあるのかもしれません。
みんな結構許せてる! 仕事でのOK・NGファッション
そう感じるデータがあります。株式会社アイデムでは、毎月、求人に応募した方に調査を行い、「イーアイデム会員アンケート」として結果を発表しています。その中で、「身だしなみについて、働く中で嫌な気持ちになったり、適切ではないと思う内容は?」と、いわゆる仕事でのNGファッションについて聞いたところ、昨今の皆さんの感覚の変化が見えてきました。
2024年5月に行った調査では、仕事のNGファッションの1位は「肌の露出が多い服装」45.7%、2位は「大ぶりのピアス・イヤーカフ」35.1%、3位は「金髪等派手な色の毛染め」31.4%となっています。裏を返せば、1位で半分以上、2位と3位では約2/3の人が、仕事の身だしなみとしてこれらは「OK」と思っていることになります。「意外にみんな寛容なんだ…」と思う方も多いかもしれません。
さらに、同様の内容を聞いた3年前の2021年調査と比較してみます。2021年時点でも、トップ3は変わらず「肌の露出が多い服装」「大振りのピアス・イヤーカフ」「金髪等派手な色の毛染め」となっていますが、驚くべきはその数字。多くの項目において、3年前は今の1.5倍〜2倍程度の数字となっており、2021年当時はこれらをNGファッションと捉える人が多かったことがうかがえます。
具体的に見ていくと、「当てはまるものはない」を除くすべての項目で3年前より回答割合が下がっていました。特に減少幅が大きいのは「金髪等派手な色の毛染め」で、57.2%(2021年)→31.4%(2024年)と、25.8ポイント減となっています。同様に、「大振りのピアス・イヤーカフ」も59.7%(2021年)→35.1%(2024年)と24.6ポイント減、「ジーンズ」30.5%(2021年)→12.8%(2024年)17.7ポイント減、「ネイルアート」は39.1%(2021年)→22.0%(2024年)で17.1ポイント減となっています。わずか3年で、「身だしなみ」に関する意識は大きく変化したようです。
●文/古橋孝美(ふるはし たかみ)
2007年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。求人広告の営業職として、企業の人事・採用担当者に採用活動の提案を行う。2008年、同社人と仕事研究所に異動し、企業と労働者への実態調査である『パートタイマー白書』の企画・調査・発行を手がける。2012年、新卒採用・就職活動に関する調査プロジェクトを立ち上げ、年間約15本の調査の企画・進行管理を行う。2度の産休・育休を経て復職。子育て施策や女性活躍に関心があり、休職中に独学で保育士資格を取得。現在は、雇用の現状や今後の課題について調査を進めるとともに、Webサイトのコンテンツのライティング、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。