当時は何も疑問を覚えず、やれたらやります(すみません)位の意識だったのを覚えています。今同じセリフを言われたら、というか、今も同じセリフを言ってくる人がいるのでしょうか。通信媒体が広がりを見せ、一次情報が「インターネット由来」のテレビ放送もあるくらいです。従来のマスメディアの制作過程を大きく上回るスピードで拡散される情報によって、より「速さ」を重視することが価値となるのであれば、「マス」の見解を求めるのは厳しくなってきているのかもしれません。
インターネットの情報が偏っているという意見は、間違っているわけではありません。検索エンジンをはじめ、ソーシャルメディアにおいても、知りたいことは積極的に調べますが、そうでない事柄には関心が向きにくいものです。また、ネットマーケティング手法としてリターゲティング広告やパーソナライズド広告があり、同じ情報が繰り返し目に付く環境が生まれやすい状況です。これによりSNSでは「個人が興味関心のある情報に偏っている」環境が作られやすくなっています。
快適なエコーチェンバー(SNS上で自分と似た興味関心を持つユーザーをフォローすることで、特定の意見や思想に影響される現象のこと)の中に身を置いていると、たとえ少数の意見であっても大多数の見解であると誤解したり、極端な見解に騙されてしまったりすることがあります。自分が望もうが望むまいが、検索履歴からの情報が優先的に表示されるフィルターバブルもあり、避けようにも難しい状態になっています。一方でテレビや新聞のニュースでは、自身の関心の有無にかかわらず社会の話題を取り上げる部分が、現在の最大の利点ではないかと考えています。
ファクトチェックを取り入れる
情報媒体が多岐にわたるようになって、どのメディアも利点と欠点があることを踏まえると、私たちは何を信用したらよいのかわからなくなりそうです。だからこそ今後重要になってくるのは「ファクトチェック」を取り入れることかもしれません。
ファクトチェック(fact-checking)とは、情報が正確なのか、信ぴょう性があるのか、ミスリードしていないか、などの検証・評価を進める行為です。フェイクニュースの広まりや誤った情報の拡散、加工された画像が出回るなど、真偽が定かではないものが増加している中、誤った情報が広がることを防ぎ、正確な情報を提供することが必要とされています。
ですが、日本での認知はまだまだ少ない状況です。総務省の実施したアンケート調査によると(※5)、日本のファクトチェックの認知度は46.5%。アメリカでは9割を超えている一方で、かなり差が開いています。ファクトチェックの方法はいくつかあります(※6)。
<例>ファクトチェックの方法
・情報の出どころ(一次情報)と見比べる
・起こった事実なのか、個人の意見なのか分ける
・複数の情報源で比較する
・曖昧な表現がないか
・画像や映像は改ざんされたものではなく、オリジナルか
自分が取得した情報が事実に基づいた内容であるかどうか、普段から検証する癖がないとなかなか難しいことです。ですが、もしも誤情報を自分が「発信してしまった立場」になったら、どうでしょう。それが個人の発言の場なのか、所属する企業・団体を通してなのか、いずれのときも信頼が揺らぐことにつながりかねません。情報は、新規性や人々の関心の高いもの、目新しいもの、感情を揺さぶるものが広がりやすいと思っています。
そして残念ながら、偽の情報ほど「広がりやすい」属性を持つことが多いです。誰かに教えてあげたいという善意が裏目に出ることがあることを、それぞれが頭の片隅に置いておくことが必要ではないでしょうか。
●文/関 夏海(せき なつみ)
2014年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。パートタイマー募集時時給等の賃金統計や、弊社サービス会員向けの各種アンケート調査の企画・分析などを主に担当。雇用の現状や今後の課題についての調査を進める一方、Webサイトのコンテンツ・ライティング、労働市場に関する情報提供、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。