新入社員研修やマナー研修に参加されている受講生の様子を見ていて、「敬語が苦手」という声をよく聞きます。また研修提案にあたり、若手社員への課題としてよく話題に挙がるのが「対面コミュニケーションへの苦手意識がある人が多い」ということです。特に、敬語を正しく使えない「新入社員や若手社員が増えている」と聞きます。
なぜ敬語を使うのか?
「最近の若者は敬語を使えない」というのは、いつの時代もよく耳にするような、変わらない先輩社員の悩みであると感じます。「〇〇のほうを〜」「〇〇になります」「○○でよろしかったでしょうか」といった、いわゆる「ファミコン言葉」(バイト敬語)や「いいっすね」「お疲れっす」など「〜っす」を多用する話し方も、日頃使用されているのをよく見かけます。
研修や職場でのOJTで、正しい話し方を教えることはもちろん大切ですが、私が新入社員や若手社員を対象に研修を企画するうえで、特に大切と感じるのは「なぜ敬語を使う必要があるのか?」という部分です。理由を聞かないと納得して動き出さないのが、イマドキの若者の特徴の一つでもあるからです。
社員の「言葉」が、会社のイメージを決める
仕事をする社会人にとって、「言葉」は非常に大切な要素です。取引先への連絡や商談、社内での会議、上司や同僚とのコミュニケーション、また日常のメールでのやり取りや各種書類の作成も、すべて「言葉」を用いて行います。お客様からすると、誰もが会社の代表です。一つ一つの行動が会社のイメージを左右し、そこで使われる社員の言葉が、その会社の評価に大きな影響を与えることもあります。
ですが、敬語を正確に使うのはかなり難しく、経験を積んだベテラン社員でも、細かい部分で間違った使い方を覚えている可能性があります。
場面で異なる敬語(ウチとソト)
敬語は、状況によって使い方が変わります。例えば、社内(ウチ)と社外(ソト)で変わります。「ウチ」は「自分が所属しているところ」で、自分の家族や自分の会社です。「ソト」は「ウチ」以外です。「ソト」の人と話すときは、「ウチ」の人には敬語は使いません。下記は取引先から電話がかかってきたときの会話です。
<取引先からの電話対応>
取引先A:○○社のAと申しますが、山田様はいらっしゃいますか?
社員B:山田さんは本日お休みです。明日、改めて電話するように申し上げます。
電話に出た社員Bの対応には間違いがあります。取引先のAが取り次ぎをたのんだ「山田さん」は、電話に出たBにとって「ウチ」の人です。電話をかけてきた「ソト」の人、Aに対して「ウチ」の人を表現するときは、敬語や敬称はとる必要があります。そのため「山田様」は、「山田」と呼び捨てにします。
また、「申し上げます」も「ウチ」の人である「山田さん」への敬語にあたるので、別の言葉に言い換える必要があります。「お電話を差し上げるよう申し伝えます」と、丁寧な言い方もありますが、もっとシンプルに「電話するように伝えます」でも問題ないと、私どもの研修ではお伝えしています。
<【改善例】取引先との電話対応>
取引先A:○○社のAと申しますが、山田様はいらっしゃいますか?
社員B:山田は本日休みを取っています。明日、改めて電話するように伝えます。
「たとえ上司であっても、他社の人との会話では呼び捨てにする」といったルールは常識的なことではありますが、社会人経験の浅い新入社員や若手社員の中には、知らない人がいる可能性もあります。このような点は、研修などでしっかり教えていく必要があります。
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●文/島田里佳(しまだ りか)
株式会社アイデム 東日本事業本部 キャリア開発支援チーム/教育・研修企画担当
大学卒業後、自動車教習所の受付として接客応対や事務などに従事。2023年、株式会社アイデム入社。現在、研修の運営を担当。研修を受講することの仕事への影響力と、人材育成の重要性を実感し、日々お客様の課題解決の役に立てるよう業務に取り組んでいる。