部下やチームメンバーが当事者意識を持ち、主体的に動けるようになるには、安心して意見や相談ができる心理的安全性の高い環境を築くことが重要です。そこで、今回は「傾聴」のスキルで信頼関係を深め、心理的安全性を高める方法をお伝えします。
(1)繰り返しがカギ!〜要点をまとめて確認する〜
傾聴の基本は、相手の話を聴き、内容を確認しながら受け止めることです。そのために有効なのが「バックトラッキング」という技術です。返答するときに相手の言葉をそのまま使ったり、繰り返したりして「聴いています」という姿勢を伝えることで、相手は「しっかり受け止められている」「理解されている」と感じて話しやすくなります。
バックトラッキングには3つの段階があり、レベルが上がるほど、深い理解を示せます。例えば、部下が「最近どんどん業務量が増えて、やることが多いのにサポートが全然足りない」と話したとします。
【レベル1】キーワードを繰り返す
返答例「サポートが足りないのですね」
シンプルですが、相手の言葉を返すことで、しっかり話を聴いていることが伝わります。
【レベル2】内容を要約して繰り返す
返答例「業務量が増えているのに、サポートが足りないのですね」
相手の話を整理しながらポイントを押さえて返すことで、より的確に理解を示せます。
【レベル3】要約+感情を繰り返す
返答例「業務量が増えたのにサポートがなくて、大変な思いをされているのですね」
話の内容に加え、感情を含めて伝えることで、より深い共感が生まれ、相手は「自分の気持ちが理解されている」と実感しやすくなります。
(2)会話を広げる!〜「はい」「いいえ」で終わらない質問をする〜
傾聴によって信頼関係が築けても、質問の仕方次第で会話が止まってしまうこともあります。例えば、「このプロジェクト、うまくいってますか?」などの「はい」「いいえ」で答えられる質問は、会話が止まりやすいです。これを「クローズドクエスチョン」と言い、「はい」「いいえ」もしくは提示した選択肢の中から答えてもらう質問のことを言います。
例えば、「今のプロジェクトで、特に難しいと感じているのはどんな点ですか?」のように、答えが「はい」「いいえ」で終わらない質問を投げかけると、自然と相手が自分の考えを話し始めます。これを「オープンクエスチョン」と言い、相手の考えや感情を引き出すのに効果的です。こうした質問を意識的に使うことで、対話の質が高まり、メンバーの主体性も引き出されます。
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●文/伊藤じんせい
チームビルディングコンサルタント。大学卒業後、測量会社勤務、行政書士事務所開業を経て、世界的な経営コンサルタント、ジェームス・スキナー氏のセミナーでチームビルディングのメソッドを学ぶ。現在、スキナー氏が創業した有限会社トゥルーノースのビジネスパートナーとして、コンサルティング活動を行っている。支援実績として、半年間で金属加工会社の売上15%増・利益率10%増、食品卸売会社で売上4.3倍を実現。木工加工会社では下請け依存体質から脱却させ、新事業の売上1,800万円を達成。著書に『自走するチームの作り方』(つた書房)。