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人が育つ会社／田中和彦

第4回「できるようになってから任せるのではなく、任せるからできるようになる」

どんな環境であれば、人は育つのでしょうか。人が育つ会社になるための人材育成の考え方や手法などを解説します。（2025年7月17日）

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人の育成では、上手に失敗させることも必要になる

　最初から失敗しない人などいません。むしろ、失敗するからこそ、そこからの学びがあり、人は成長できるのです。「引き出すマネジメント」では、成功体験が重要だとお伝えしましたが、人の育成は上手に成功させることも大事だと同時に「上手に失敗させること」も必要なのです。
　もちろん致命的な失敗は避けなくてはなりません。ただ、かすり傷くらいの失敗は、むしろ成長の糧になってくれます。なので、部下が新しい仕事にチャレンジすることを温かく見守る我慢が必要なのです。



　

　ただ、偉そうにこんなことを書いていますが、かくいう私もなかなか我慢ができずに、ついつい自分でやっちゃう人だったりします。 ある人から、「それは��自分がやったほうが早い病“だ」と言われたことがありました。
　管理職研修で、「部下に任せたほうがいいと頭では分かっていても、なぜか自分でやっちゃう人はいますか？」と聞くと、多くの人から手が挙がります。管理職の人たちの中でも、「自分がやったほうが早い病」はまん延しているんですね。

　では、なぜ自分でやっちゃうのかを聞いていくと、いろんな理由が挙がってきます。以下に記していくと、
・上司や顧客から「早く、早く」と急かされるから、どうしても早く結果を出すためにも自分でやってしまう　（→これは仕方のない部分もありますね）
・残業時間の制約などもあり、部下に負荷の高い仕事をお願いするのは気が引ける。なので、そういう仕事は自分で引き受けてしまう　（→部下思いの優しい上司かもしれませんが…）
・説明が面倒くさい。部下に任せる場合は、材料を渡して段取りを説明して、途中で進捗の確認をして、出来上がったものをチェックし、修正をお願いしなくてはならない。そんなことに時間を使うのなら、ぱぱっと自分で片づけてしまったほうがいい　（→気持ちは分からなくもないですが、ここが我慢のしどころでしょうか）
　それぞれ、うなずける点もありますが、部下の育成という観点は抜けている気がします。

　ただ、任せられない人の心の奥底には、こんな本音があったりします。
・自分がやったほうが、ストレスがない。部下に任せると、たいてい自分の思いどおりのものが上がってこない。自分でやったなら、自分の好きなやり方でやりたいようにやって思いどおりのものが出来上がる。だから、自分でやっちゃう　（→もしかしたら、実はこれが一番多い理由なのかもしれませんよ）

　だから、この任せたときのストレスをも我慢して、部下に任せて育成する気持ちを強く持つことが必要なのです（自分自身への自戒も込めて）。


●文／田中和彦（たなか かずひこ）
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント／コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』（日本実業出版社）、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』（明日香出版社）、『時間に追われない39歳からの仕事術』（PHP文庫）、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』（ＷＡＶＥ出版）など多数。
連絡先：info@planet-5.com
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