事実確認後は、再発防止と復職支援を進める
調査の結果、上司のパワハラが認められた場合には、行為者(Bさん)への適切な対応だけでなく、職場全体で再発防止に取り組む必要があります。例えば、対策として管理職への指導方法の見直し、ハラスメント研修の実施、相談窓口の周知などが考えられます。パワハラとまでは認められなかった場合でも、「指導方法に改善の余地はなかったか?」「相談しにくい職場になっていなかったか?」を振り返ることが、再発防止につながります。
また、休職者が復帰するときに「元の上司のところに戻るかどうか」は、休職理由や上司との関係性を踏まえて判断する必要があります。休職理由が人間関係やハラスメントなら、同じ上司の下だと再発のリスクが高いでしょう。一方、人間関係やハラスメント以外の理由だったり、元の上司との関係が悪くなかったりする場合、元の職場は仕事にも慣れているため、適切な配慮ができれば復帰しやすいと言えます。必要に応じて配置転換や業務内容の調整、定期的な面談などを行い、安心して働ける環境を整えることが大切です。
管理職と企業に求められる基本姿勢
「自分も厳しく育てられたから、このくらいは普通だ」と考えていても、時代や働き方は変化しています。部下の成長を願う指導であっても、伝え方や頻度、場所によっては、大きな心理的負担を与えることがあります。管理職に求められる指導は「厳しくするか、優しくするか」ではなく、「相手の成長につながる伝え方ができているか?」という視点です。
また、企業は休職者が出たからといって、直ちにその休職者の上司による「パワハラだ」と決めつけることは適切ではありません。メンタルヘルス不調は、仕事だけでなく、家庭や健康など複数の要因が重なって生じることも少なくありません。休職者が出たら、企業が最初に行うべきことは「誰が悪いか?」を決めることではなく、「何が起きたのか?」を正確に把握することです。その上で、必要な改善策を講じ、安心して働ける職場づくりにつなげていくことが重要です。
企業には、本人・上司・周囲の関係者から事実を丁寧に確認し、公平に判断する姿勢が求められます。従業員が安心して相談でき、管理職も1人で抱え込まない職場づくりが、休職や離職を防ぐ第一歩となるでしょう。
2年後の令和10年4月から、ストレスチェックが全事業所で義務化される予定です(現在、労働者50人未満の事業場は努力義務)。ストレスチェックの目的は実施することではなく、その結果を職場環境の改善に生かすことです。メンタル不調の休職者が出ないように、日頃から相談しやすい職場づくりや管理職の指導力向上に取り組むことが大切です。
●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。