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ビジネスで使える心理学/菊原智明

【第21回】警戒心を一気に解くための「クレショフ効果」

商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。

クレショフ効果とは?

 クレショフ効果とは、1つの画像や写真が映画的に編集されることによって、その前後に位置する他の映像の意味に対して及ぼす性質のことを言います。
 前後の脈絡がない映像や写真の羅列であっても、人間は前後のつながりを無意識に関連づけて意味を解釈してしまうことがあります。


●解説

 心理学者のクレショフは無表情の男性の写真を3つ用意しました。そして、その写真の前に、3つの異なる写真を置きました。
第1パターン/スープ皿のクローズアップ
第2パターン/棺の中の遺体
第3パターン/ソファに横たわる女性

 被験者にそれぞれのパターンを見せた後で、印象を聞きました。すると、無表情の男性の写真があらわす感情を第1では空腹と感じ、第2では悲しみ、第3では欲望と解釈したのです。
 同じ無表情の写真でも、前の情報によって受け取り方が変わる心理現象を、クレショフ効果と言います。

 クレショフ効果を営業に活用してみましょう。あなたがお客さまだったとします。会う前に、営業マンの写真入りの手紙が届きました。その写真ですが、無愛想なものと笑顔では、どのような違いがあるでしょうか。無愛想な表情の営業マンは《とっつきづらい人だ》と思い、笑顔の営業マンは《感じのいい人だ》と思うのではないでしょうか。
 
  お客さまと会う前からよい印象を持ってもらえれば、その後の営業活動は非常に楽になります。とはいえ、感じのいい写真を撮るのは難しいという人もいます。

 先日、ある60代の社長さんとお会いしたときのことです。うれしそうに写真入りのハガキを見せてくれました。ハガキには、うれしそうな社長さんと赤ちゃんが一緒に写っていました。

「お孫さんですか?」
社長「そうです。かわいくてしょうがないんです」

 この社長さんはかなりの強面です。しかし、お孫さんとの写真は別人のようです。にこやかで、とてもいい表情をされていました。このハガキをお客さまに送り、好印象を持ってもらったようです。
 事前にお客さまによい印象を持ってもらうためには、いい写真を載せることが大切です。

 「なかなか笑顔が作れない」、「自分だけではどうもインパクトが出ない」という人は赤ちゃんやお子さんと一緒に撮ってみてはいかがでしょうか。ペットなども効果的です。





菊原智明●営業コンサルタント。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。「口ベタ」「あがり症」に悩み、7年間、苦しい営業マン時代を過ごす。その後、それまでの営業活動の間違いに気づいてやり方を大きく変えたところ、成績がみるみる上がり4年連続トップ営業マンに。自分と同じように営業に悩んでいる人たちをサポートしたいとの思いから、2006年に独立。著者に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(明日香出版社)、『面接ではウソをつけ』(星海社新書)など多数。 
http://www.tuki1.net/

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