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マネジャーの心得／田中和彦

第7回「結果だけ問う上司になるな」

現場マネジャーに向けて、リーダーとしての心構えやマネジメントの手法などを解説します。

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納期を守らない部下を叱る前に、着手日を確認したかを自問自答すべし

　私が情報誌の編集長時代のことです。
　編集部にＴ君という入社3年目の男性社員が異動してきました。非常に真面目な性格で、何事にも一生懸命に取り組むのですが、なぜか入稿する締め切り日が近付くと、とにかくパニックに陥り、普通の状態ではなくなるのです。

　本来なら、誌面のレイアウトを組むデザイナーさんと打ち合わせをしなければならないタイミングなのに、原稿も整理されていなければ、使うべき写真の選択すら行なわれていないのです。机の上に散乱した書類や写真を前に、何から手をつけていいのかわからず、ただただ焦っているということが何度も繰り返されていました。最終的には、副編集長や先輩たちの手を借りながら、ギリギリの時間の中でなんとか形にするという綱渡りのような仕事ぶりが続いていたのです。

　私は、何度となく納期を守ることの重要性を説いてきました。そのたびにＴ君は、「わかりました。今後は気をつけます！」と反省するのですが、やはり、締め切り前のバタバタは一向に改善されませんでした。
　情報誌は週刊だったのですが、常に1週間のサイクルで作られる一般的な週刊誌とは違い、特集記事は、編集会議で企画が決まってから、約2カ月かけて形にしていました。週刊誌なのに、隔月刊のペースで記事を作るのです。

わかりやすく説明すると、

�“�売8週間前に編集会議で企画が決定
��発売7週間前〜3週間前の間に取材や原稿依頼などを実施
�Ｈ�売3週間前〜2週間前に入稿前作業
�と�売1週間前に入稿して、
�ト�売5日前に印刷前の最終チェック

という流れで、編集部員は、常に3、4本の記事企画を並行して走らせていたわけです。
　ところが、話を聞いてみると、Ｔ君は直近の発売号の記事作りを優先させてしまい、本来なら並行して進めるべき企画は手をつけずに、後回しにしていたことがわかりました。要するに、1本終わっては次を始め、またそれが終わったら次に手をつけるという自転車操業のような仕事ぶりだったわけです。

　それを知った私は「納期を守れ」とばかり言ってきた自分を猛省しました。仕事の納期ばかりを厳しく指摘し、着手するタイミングは放置していたからです。



スタートが1日遅れれば、ゴールは3日遠ざかる

　仕事には必ず納期があり、その仕事を引き受けた以上、担当者には納期を守ることが義務付けられます。それがビジネスの基本です。

　しかし、納期ばかりを意識させて徹底させても、締め切りのギリギリ間際でバタバタと慌てているようでは、質が担保できているかが不安ですし、最終チェックも満足にできないはずです。締め切りに駆け込むような仕事ぶりでは、時間管理が十分にできているとは言えません。
　納期を徹底させる前に、まずはスタートを切る着手日を確認する必要があります。私が反省したのは、まさにこの点でした。
　「いつまでにやるのか？」ばかりを詰問し、「いつからやり始めるのか？」を確認もせずに、プロセスでは放置プレイの状態だったのです。



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●文／田中和彦（たなか かずひこ）
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント／コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』（日本実業出版社）、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』（明日香出版社）など多数。
連絡先：info@planet-5.com
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