採用選考の繰り下げについて
日々、流れてくる、労働関連の多彩なニュース。本コラム欄では、アイデム人と仕事研究所の所員が、そうしたニュースに触れて「思うこと」を、持ち回りで執筆します。
2016年卒業予定の新卒採用に関する企業の広報活動が、3月1日に解禁されてから既に2ヶ月になろうとしています。 経団連の「採用選考に関する指針」により、広報活動の開始日が従来の12月1日から3月1日に、選考活動開始日が4月1日から8月1日と繰り下げられ、正式な内定日は従来と変わらない10月1日以降となっていることから、このスケジュール通り進めば、今年の新卒採用は短期決戦になると思われます。
直近の弊社「2016年度新卒採用に関する企業調査(2015年3月1日状況)」結果から、採用活動の状況を確認してみましょう。 企業に、2016年度の新卒採用活動の状況について聞いたところ、広報活動やその準備も含めて「現在行っている」と回答した企業が45.6%、「まだ何も行っていない」企業が36.5%という結果となっています。一方、3月1日時点で2016年度の新卒採用活動が「既に終了している」と回答した企業は17.9%に上っており、そのうちの半数が、2015年1月末頃までに採用活動を終了している結果となりました。 経団連の「採用選考に関する指針」は、学生がその本分である学業に専念することができるよう政府の要請に沿って決められたものです。従来の自主ルールである「倫理憲章」から名称を変更し、より拘束力の高いものとなりました。経団連に加盟している約1,300社などがその共通ルールを守るように求められ、また、経団連に加盟していない多くの企業の採用活動にも影響力を及ぼしています。
しかし“法律”ではなくあくまでも“指針”という位置づけのため、経団連に加盟している企業がそのルールを破ったとしても、罰則規定などはありません。ましてや、加盟していない企業は、そのルールを守る必要がないのです。 そのため、上記結果のように既に採用活動を終了している企業も出ています。 同じ調査において、新卒採用活動の広報・選考活動時期が繰り下がったことについて、自社にどのような影響があるかを聞いた結果では、「良い影響しかない」3.4%、「悪い影響よりも良い影響の方が多い」9.6%、「良い影響と悪い影響は同じくらい」34.3%、「良い影響よりも悪い影響の方が多い」11.9%、「悪い影響しかない」4.6%、「そもそも自社に影響はない」36.2%となりました。好影響も悪影響も同程度起こりうると感じている企業が3割を超える一方、影響を気にしていない企業も4割近く存在しています。
また、「悪い影響しかない」「そもそも自社に影響はない」以外の回答をした企業に、新卒採用活動の広報・選考活動時期が変更になることによって生じる「良い影響」をどのように考えているかを聞いた結果で最も多くの回答を集めたのは、「学生が学業や課外活動に専念する時間が増え、より質の高い者の応募・採用が見込めそう(42.1%)」と、学生の質の向上に期待している結果となっています。 一方の学生は、採用選考の繰り下げなどについて、どのように感じているのでしょうか。
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●文/小杉雅和(こすぎ まさかず)アイデム人と仕事研究所【担当分野】賃金統計・アンケート調査等の作成、分析。
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