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2015年12月、職場でのメンタルヘルス対策として、労働者の心理的な負担の程度を把握するストレスチェックが義務化されました。近年、企業にとってメンタルヘルスの重要性は増しています。豊富な臨床経験を持つ著者が、メンタルヘルスの基礎を解説します。
目的と限界
こんにちは、いよいよ年の瀬ですね。早いところでは、第2回目の法定ストレスチェックを開始している企業もあるようです。初年度は無我夢中で、どんなストレスチェックをやったらいいのか分からず、「とりあえず“厚生労働省推奨の57項目”にしました」という企業が、私の知る範囲では多数です。
また、既定の集団分析、会社全体のストレス具合が分かる組織診断、さらに部・課ごとの職場診断も実施したものの、結果をどのように活用すればいいのか分からないというところも、多くありました。どう受け止め、どう改善すればいいのか、具体的な実践方法を示してほしいというご要望をたくさんいただきました。
しかし、厚生労働省推奨の57の質問項目はかなり限定したものです。そのため、集団分析にかけても、職場環境の改善につなげられるほどの成果を得るのは困難です。
そもそもの目的として、電車に例えれば、速く走るためには新幹線を使用するべきで、在来線に時速200キロを求めるのは無理であることと似ています。使用するストレスチェックの目的によって、限界があります。
ラインケアは最大の改善法
そこで有効になるのが、今回のテーマの「ストレスチェック後のラインケア」です。ラインケアとは、管理監督者である上司が部下に対して行う、メンタルヘルスに関する取り組みのことをいいます。
小職の40年以上にわたるメンタルヘルス研究調査結果をご紹介します。メンタルヘルス不全者が少ない職場を従属変数として、種々の経営労務項目を独立変数として、影響因子を考察する研究をしてきました。言い換えれば、会社として「何をやれば良くなるのか」ということを調査しました。給料、福利厚生、職場環境などの項目の中でも、因子負荷量が非常に大きいのは、他の研究でも同様ですが「上司のリーダーシップ」です。
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●文/佐藤隆(さとう たかし)
株式会社総合心理教育研究所 代表取締役、臨床心理士、精神保健福祉士
日本鋼管病院の精神衛生室及び同社人事部兼務にて、日本のメンタルヘルス対策草創期の実務に携わる。学術活動として300社以上の企業および官公庁を対象に、リーダーシップおよび管理職のメンタルヘルスに関する調査研究を実施。多数の企業における人事部・管理職向け研修や人事システム立案に携わる。現在グロービス経営大学院大学教授、ハンス・ セリエ財団カナダストレス研究所上席客員研究員。著書に『臨床心理学とストレス科学』(エイデル研究所)、『ビジネススクールで教えるメンタルヘルス入門』(ダイヤモンド社)など多数。
http://www.sipe-selye.co.jp
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