■相談
去年の10月に全社をあげての新規事業として立ち上がったプロジェクトの責任者を務めています。社長の肝いりの事業なので、各部門から優秀な人材を引き抜く形で組織が作られました。
集められた社員全員の潜在能力が高く、「これでプロジェクトの成功は約束されたようなものだ」と経営陣から言われていましたが、半年近くたっても組織はうまく機能せず、なかなか成果も表れてきません。何が問題なのでしょうか?
上から「どうなっているんだ!」とせっつかれており、私自身が精神的に追い込まれております。

■回答==========
日本のプロ野球界でも似たようなケースがありますね。各球団から4番バッターを高い年俸で買い集めて、オーナーから優勝も当然という目で見られているのに、なぜか結果の出ない某チームのようです。こういうチームを率いる監督は相当なプレッシャーだと思われます。すべての責任を押し付けられて、精神的に追い込まれているという相談者の方の状況もよく理解できます。
鶴の一声のトップダウンによって決まったプロジェクトは、たとえ課題が山積みだとしても、周囲の誰も反対できずに進められることがあります。優秀な人材が集められたのにもかかわらず、うまくいかないとすれば、そもそも社長の肝いりという新規事業自体に問題がないかどうかの検証も必要だと思います。
その可能性が高い場合は、理不尽に詰め腹を切らされるのを避けるためにも、あなたの責任ではないという客観的なデータなども収集しておくことです。
さて、プロジェクトに問題がなかった場合は、どう考えればいいでしょうか。プロジェクトメンバーの潜在能力(ポテンシャル)が高いのに、それにふさわしい結果が出ないという問題です。
気分転換に、まずは以下の問題を考えてみてください。
【太郎くんと次郎くんに庭の草刈りをお願いすることになりました。10分当たり太郎くんは3平方メートル、次郎くんは2平方メートル草を刈る力があります。庭の広さは10平方メートルあります。2人に庭の草を刈ってもらうことにしました。さて、庭の草は何分間で刈り取ることができるでしょうか?】
どうですか? 普通に考えれば20分ですね。でも、答えは、「やってみなくちゃ分からない」です。いえいえ、からかっているわけではありません。実は、この話には元ネタがあって、立川志の輔さんの「親の顔」という創作落語の中に出てきます。
学校のテストでの金太(きんた)の答えは、「やってみなくちゃ分からない」で、先生がその理由を聞いてみると、「太郎君と次郎君は仲がいいか分からないんだもん。仲が良かったら一緒に遊びたいから、すぐに終わらせるでしょ?でも、仲が悪かったら相手に押し付けたいからずっと終わらない」と答えた…という話です。
落語ですが、マネジメントの本質的な要素が込められた奥深い内容だと思いませんか?
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。