【第10回】お客さまに気持ちよく契約していただける「ハード・トゥ・ゲット・テクニック」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
ハード・トゥ・ゲット・テクニックとは?
人は褒められることで「喜び」の感情が生まれ、その結果、好意的行動の誘発が可能になります。
こういう人間の心理を応用して、相手を特別視していると思わせ、好意や信頼を得る方法を「ハード・トゥ・ゲット・テクニック」と言います。「手に入れにくいものをあなただけに提供しましょう」という意味もあります。
●解説
人は誰でも「あなただけは特別」という言葉に弱いものです。日常生活でも、「あなただから相談するのですが」とか「信用できる君だから話すんだけど」という会話が使われます。これによって特別な関係が芽生えてしまったように錯覚し、相手に対して好意や信頼を寄せてしまうことがあります。これを「ハード・トゥ・ゲット・テクニック」といいます。
あなたが何かを買う立場だとして、営業マンからこう言われたらどうでしょうか?
営業マン「こちらが見積書です。これでご検討ください」
これでは何の特別感もありません。では、このように言われたらどうでしょうか?
営業マン「こちらが見積書です。○○さまだけに特別価格にさせていただきました」
こう言われると特別扱いされた気がします。私はいい気分になってしまいます。
いい関係ができているお客さまから、息子さん夫婦を紹介していただいたときのことです。競合もなく、商談は和やかに進みました。ですが、クロージング段階になって滞ってしまったのです。
私「これから先の細かい話は契約後になりますので、お話を進めてもよろしいでしょうか?」
お客さま「ちょっと待ってほしいのですが…」
お客さまは何か言いたそうな素振りをされましたが、私には分かりませんでした。
私「お父さまの家を建てたときの条件と一緒ですし、予算的にもおさまっています」
お客さま「特に不満はないのですが、例えば車を買うときは最後に“ じゃあガソリン満タンで”とお願いできますよね。家にはそういうの、ないですかね」
私は少し考えて、こう提案しました。
私「特別に、迷われていたオプションを1つサービスします。お父さまには内緒にしてください」
この後、気持ちよく契約していただいたのです。
お客さまは《自分だけは特別な条件で契約したい》という気持ちがあります。
見積書を出すときやクロージングに際しては、「お客さまだけ特別に」という言葉を添えてみてください。
菊原智明●営業コンサルタント。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。「口ベタ」「あがり症」に悩み、7年間、苦しい営業マン時代を過ごす。その後、それまでの営業活動の間違いに気づいてやり方を大きく変えたところ、成績がみるみる上がり4年連続トップ営業マンに。自分と同じように営業に悩んでいる人たちをサポートしたいとの思いから、2006年に独立。著者に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(明日香出版社)、『面接ではウソをつけ』(星海社新書)など多数。
http://www.tuki1.net/
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