朝、コーヒーを飲むという人は少なくないだろう。それが1杯だけではなく3杯、4杯となるとカフェイン依存症になるかもしれない。
集中力を持続させるために
30歳の賢一は、IT関連企業に勤務して8年になる。コロナ禍になってから在宅勤務が基本になり、ほぼ自宅で仕事をしている。
朝、賢一はスポーツドリンクを片手に自宅周辺を散歩するところから始まる。朝食はファミリーレストランで、メニューはホットケーキかフレンチトースト。たっぷり蜜をつけて食べ、コーヒーを2杯飲む。昼は惣菜パンや菓子パンと、野菜ジュースで済ませることが多い。午後は眠くなるので濃いコーヒーを飲み、3時のおやつにはピーナッツチョコレートや大福などの好きなお菓子を食べる。夜は、資格取得の勉強していて、眠気覚ましにカフェインの錠剤を常用していた。
仕事中、賢一は集中力を持続させるためにドリンク剤やコーヒーをよく飲んだ。また、水を飲むのが苦手なので、スポーツドリンクで水分補給をしていた。
そんな賢一は、半年ほど前から疲れやすくなった。なかなか集中できず、めまいがすることもあり、さらにドリンク剤を飲むようになった。やがて気分が悪くなったり、勤務中に眠気に襲われることが増え、仕事でミスをするようになった。昼間もカフェインの錠剤を飲むようにしたが、うつ気分が出てくるようになった。在宅で仕事をしているときに、会社からの連絡に反応できないことが増え、同僚から病院に行くように言われた。
偏食で、砂糖とカフェインに依存
賢一はパンが主食で、米は外食のときしか食べなかった。普段は食パンにジャムを塗って食べるか、惣菜パンや菓子パンを食べていた。また、野菜もほとんど食べないので野菜ジュースで補った。
主菜も外食でしか食べず、魚は骨を取るのが面倒なので基本的には食べなかった。在宅勤務が増えてからは外食が減ったので、肉や魚を食べる機会はさらに少なくなった。ほぼ毎日、パンとコーヒー、スポーツドリンク、ドリンク剤、野菜ジュースで済ませた。つまり、毎日多量のカフェインと砂糖ばかり摂取していることになり、依存症になった。
カフェインをとらないと落ち着かない
カフェインはコーヒーやドリンク剤、エナジードリンクにも含まれている。人によるが、3時間以内に体重1キロにつき17mg以上摂取するとカフェイン中毒になると言われる。賢一は体重58キロなので、3時間で986mg以上摂取してはいけない。ちなみにドリンク剤で約50mg、コーヒーは1杯で約60mgほどだ。
賢一の朝のカフェイン量はドリンク剤1本とコーヒー2杯で170mg。昼までにコーヒーを2杯は飲むので、午前中のカフェイン摂取量は290mgだ。昼にもドリンク剤とコーヒー、夜もカフェイン錠剤とコーヒー。合計すると1日約840mg以上になる。賢一は慢性的にカフェインを摂取していたことになる。賢一はカフェインをとらないと落ち着かなかったり、イライラしたり、集中できない状態になっていた。
●文/河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。