2024年4月も盛りだくさん!人事労務に関する法改正
毎年4月は、多くの法改正が施行されます。今回は、主に人事労務分野(募集・採用・雇用管理)に関連する法改正について、前回に引き続きまとめていきます。
<ラインナップ>
(1)【求人原稿は過去のものを流用しないで!】
募集時の明示事項が増える!
(2)【労働条件通知書、見直し必須!】
労働契約の締結&更新の際にも、明示事項や説明が増える!
(3)【労働者が40人以上43.5人未満の企業は要注意】
障害者雇用率が2.3%⇒2.5%にアップ ←ココマデ前回公開
(4)【労働者の理解を促し、有用な制度へ】←今回はココカラ
裁量労働制に新たな手続きが追加
(5)【2024年問題】
自動車運転業・建設業で時間外労働の上限規制〜働き方改革関連法〜がスタート
(4)【労働者の理解を促し、有用な制度へ】
裁量労働制に新たな手続きが追加
裁量労働制は、「みなし労働時間制」の1つです。「働いた時間の長さ」ではなく「働いたことによる成果」に対して報酬を支払うもので、実労働時間ではなく、労使で定めた時間を“働いたものとみなす”制度です。「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があり、それぞれ適用でできる職種が限られています。「令和5年就労条件総合調査」によると、裁量労働制を導入している企業は2.5%と多くはありません。
2024年4月からは、裁量労働制を導入する“すべての事業場”で、以下の手続きが必要になってきます(主要なものを抜粋)。
【専門業務型】「労働者の同意・同意の撤回」の手続きを定める
・本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことを労使協定に定める
・同意の撤回の手続きと、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定・労使委員会の決議に定める
これまで、「労働者の同意」「同意の撤回」に関する手続きは企画業務型のみに定められていましたが、専門業務型にも適用されることになります。
【企画業務型】評価・賃金制度の変更時に労使委員会への説明
・適用される評価制度や賃金制度を変更する場合に、使用者が労使委員会に変更内容について説明する事項(説明を事前に行うことや説明項目など)を労使委員会の運営規程に定める
・適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うことを労使委員会の決議に定める
【企画業務型】労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う
・制度の実施状況の把握の頻度や方法などを定める
【企画業務型】労使委員会は6か月以内ごとに1回開催
裁量労働制というと、「定額働かせ放題」というイメージもあるかと思います。だからこそ、労働者側に不利な運用がなされないよう、労働者に制度の理解を促し、理解した上で働き方に同意できるよう整備されています。また、労使委員会にも説明機会や制度見直しの機能を持たせ、その実効性を高めていくようです。裁量労働制は、労働時間ではなく成果への評価を求める労働者にとっては魅力的な制度です。また、生産性の向上など企業側にもメリットがあります。今後は、労働者を保護しながら、適切で健全な運用を進めていくことがより求められます。
※参考
●文/古橋孝美(ふるはし たかみ)
2007年、株式会社アイデム入社。東日本事業本部データリサーチチーム所属。求人広告の営業職として、企業の人事・採用担当者に採用活動の提案を行う。2008年、同社人と仕事研究所に異動し、企業と労働者への実態調査である『パートタイマー白書』の企画・調査・発行を手がける。2012年、新卒採用・就職活動に関する調査プロジェクトを立ち上げ、年間約15本の調査の企画・進行管理を行う。2度の産休・育休を経て復職。子育て施策や女性活躍に関心があり、休職中に独学で保育士資格を取得。現在は、雇用の現状や今後の課題について調査を進めるとともに、Webサイトのコンテンツのライティング、顧客向け法律情報資料などの作成・編集業務も行っている。