近年、年次有給休暇の取得率は大幅に改善されてきました。2019年4月の義務化以降、着実に上昇し、2024年には62.1%と過去最高の水準に達しています(厚生労働省「令和5年就労条件総合調査概況」)。この向上は、企業の取り組みや従業員の意識改革によるものと考えられます。今回は、有給休暇に関する事例を取り上げ、どのように対応すべきか考えてみましょう。
■今回の事例
Aさん(35歳男性)は、部下のBさん(27歳女性)のことで気になっていることがあります。Bさんは有休を取得すると、休暇中の仕事を他のメンバーに任せきりにして負担をかけてしまうのです。今回もBさんは「北海道旅行に行くんだ!」と職場で楽しそうに話していますが、休暇中の業務の段取りに甘い部分があり、Aさんはやきもきしています。Bさんに自分の業務の責任を自覚させ、周囲に迷惑をかけない行動を促すには、どのようにすればよいのでしょうか?
■解説
有休取得は快諾し、業務の段取りは確認する
Bさんから有休申請があったとき、どのように返答すればよいのでしょうか?
まずNG例をお伝えします。
<NG例>
「えー! 休み中の業務の段取りもできていないのに、北海道に行くんだ!」と言いながら有休申請をしぶしぶ承認する。
有休を取る際に注意をすると、取得そのものを否定していると誤解されることがあります。有休は労働者の権利で、業務の段取りは義務です。この2つは別物なので、分けて考えるようにします。これを踏まえると、下記のような返答が望ましいでしょう。
<OK例>
有休申請をしたときに「北海道旅行、楽しんできてね」と快諾した後、業務の段取りについて確認する。
まず、有休の申請があったら気持ちよく取得してもらえるように快諾します。次に、業務の段取りについて確認するようにします。声掛けの例について、ケースごとに示すので参考にしていただければと思います。
(1)仕事の進捗確認をする場合
「来週の有休前に、今の仕事の進捗を教えてもらえますか?」
「休み前に一度業務の状況を確認しておきたいのですが、どんな感じですか?」
(2)引き継ぎの準備をする場合
「休暇中の引き継ぎは誰にお願いする予定ですか? 何か不安な点はありませんか?」
「休み中の仕事を引き継ぐ相手が困らないように、注意点とかまとめておいてもらえますか?」
(3)業務の優先順位について考えてもらう場合
「旅行前に優先的に終わらせたい仕事ってありますか? 今のうちに整理しておきましょうか」
「忙しくなる前に、何を優先すべきか話し合っておきましょう」
※最新号のみ、会員登録(無料)なしで閲覧いただけます
●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。