2025年4月に育児介護休業法の改正が控えています。仕事と育児介護を両立するための支援メニューがより多くなり、対象者が広がります。
企業の労務管理は、日々の業務に加えて法改正への対応も求められます。特に、育児介護休業制度のような労働者の権利に関わるルール変更については、管理職が適切に理解し、正確な情報を把握しておくことが大切です。しかし、業務の忙しさから、つい知識が曖昧なまま対応してしまうケースも少なくありません。
今回紹介するのは、製造業のA課長が非正規従業員のBさんから妊娠の報告を受けた際、育休取得の可否について誤った判断を下してしまった事例です。このような確認不足が引き起こすリスクと、事前にできる対策について考えてみましょう。
■今回の事例
A課長(53歳)は、同じ課内のパート勤務(有期雇用)のBさん(26歳)から妊娠の報告を受け、育児休業取得の希望を聞きました。しかし、A課長は「あなたは育休を取れないよ。対象になりません」と言ってしまいました。その後、総務部に確認したところ、法改正により、有期雇用の労働者でも育休を取得できることが分かりました。この出来事の後、BさんはA課長に対して不信感を抱くようになり、コミュニケーションがうまくいかなくなりました。
■解説
Bさんは、育休制度について事前に調べた上でA課長に相談をしていました。若い世代ほどインターネットを活用し、正確な情報を得る能力に長けています。また、最近では、高校や大学などで、働く上でのルールやコンプライアンスを学ぶ機会があるので、自分の労働条件について、上司よりも詳しい場合があります。そのため、管理職が誤った情報を伝えると、信頼関係の悪化を招きかねません。
不安なときは確認する
このようなトラブルを未然に防ぐには、自分の思っていることが本当に正しいのかどうか、顧みる必要があります。特に労働に関することは法律絡みのことが多いので、なおさらです。例えば、部下から育児休業の申し出があったら、
「あれ、どうだったかなぁ? 少し時間をください」
「専門外のことなので、総務に確認してから返事しますね」
「専門外のことなので、就業規則を確認します」
と伝えましょう。そして、総務や人事部などの専門部署と連携を取ったり、就業規則を確認したりしましょう。業務に直接関係がないことをすべて把握しておくのは難しいと思いますので、確認を習慣化することでトラブルを防止しましょう。
●文/山田真由子(やまだ まゆこ)
山田真由子社会保険労務士事務所代表。特定社会保険労務士、公認心理師、キャリアコンサルタント。26歳のときに3度目の受験で社会保険労務士に合格。さまざまな業種にわたり、約15年のOL 生活を経て、2006年12月に独立開業。現在、「誰もが輝く職場づくりをサポートする」をミッションとして活動している。経営者や総務部担当者などから受けた相談件数は延べ10,000件以上、セミナー登壇は1,500回以上を数える。著書に『外国人労働者の雇い方完全マニュアル』(C&R研究所)、『会社で泣き寝入りしないハラスメント防衛マニュアル部長、それってパワハラですよ』(徳間書店)、『すぐに使える!はじめて上司の対応ツール』(税務経理協会)。