第34回「部下はストーカー被害者」
職場のメンタルヘルスに関する事例・対策などについて、専門家が解説します。
最近、DVやストーカーなどによる殺人事件のニュースを頻繁に見聞きするようになった。加害者になるタイプの人が増えたのだろう。つまり身近にそうした人々がいる可能性が高いということになる。できれば避けたい人々だ。
ストーカー被害の相談
保険会社の課長の幹人は、女性の部下からストーカー被害に遭っているという相談を受けた。加害者の交際男性は、以前の部下だった。幹人は動揺したが、「警察にも相談して、大事にならないようにしたほうがいい」と言った。ストーカーの相談を受けたのは初めてで、どう対処していいか分からなかった。近年、ストーカーによる殺人事件が頻発していることもあり、恐怖心が先に立った。
女性は、加害男性と半同棲のような交際をしていた。だが、交際2カ月がたった頃からささいなことで暴力を振るわれるようになり、別れることにした。彼女としては、男性が納得してくれたと思い込んでいた。
しかし、別れて3カ月が過ぎた頃からストーカー行為が始まった。付けまわされたり、携帯に電話やメールが入ってくるようになった。「今日はあそこに行っただろう。何をしていたんだ?」「今はどんな男と付き合っているんだ、許さない!」などという内容だ。
電話やメールが来るたびに彼女は幹人に相談していた。相談できるのは、男性を知っている幹人だけだったからだ。彼女は不眠症に悩み、情緒不安定で仕事どころではなかった。幹人も頻繁に相談されるので、精神的に疲れ果てていた。
トラウマに悩まされて
最近、その女性は元彼の暴力やストーカー行為は、自分が気づかないうちに彼に何かしたことが原因ではないかと思うようになった。そう考えるようになると、何もかもが気になって仕方がなくなってきた。他人にどう思われたか、人の反応に異常なほど敏感になってきたのだ。
彼女は営業職という仕事柄、知らないうちに大切なお客さまを失ってしまったら大変なことになる、とも思うようになった。
始めは課長への対応から始まった。「先ほどの報告の電話ですが、内容は大丈夫でしたか?」「今の報告で不快な気分にならなかったでしょうか?」などの確認行為は、顧客にまで発展していった。
例えば、保険の書き換えのお客さまに「先ほどはありがとうございました。ところで、私、何か不愉快なことを言いませんでしたか?」などと聞いてしまうのだ。営業先に電話で反応を確認したり、直接会って気分を確認しないと気が済まなくなっていったのだ。
女性は引っ越しをしたり、電話番号を変えた。しかし、同じ会社に勤務し、会社で使っているスマホは変えることができずにいた。ストーカーは、彼女の会社の仕事用のパソコンやスマホに連絡を入れてきた。やがて移転先の住所も突き止められ、彼女は追い詰められていった。
幹人は転勤を勧めたが、今はできないという返事だった。彼女には小学生の子供がいて、「子供がかわいそうなので、もうこれ以上転校させられない」という。幹人はいい対処法を見つけられないでいた。
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●河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。
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