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マネジャーの心得/田中和彦

第11回「あなたは部下の成長の機会を奪っていませんか?」

現場マネジャーに向けて、リーダーとしての心構えやマネジメントの手法などを解説します。

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何でも自分でやってしまう上司は、「我慢」を覚えなくてはならない

 あなたは、部署としてやるべきタスクを、「部下に任せようか、それとも自分でやってしまおうか」と、悩んだことはありませんか?
 そんな場合、「自分でやったほうが早い」という理由で、部下に任せず、自ら引き受けてやってしまっている上司がいます。「自分でやったほうが自分の思いどおりになる」「説明するのに時間をかけるくらいなら、さっさと自分でやる」「ミスやトラブルを避けるには、自分のほうが確実だから」などの理由もよく耳にします。

 当たり前のことですが、上司は、部下よりも何かしら優れていたり秀でていたりするからこそ、人の上に立っているわけです。つまり、部下よりも上司が実務を担当したほうが、質が高く、量が多く、スピードが速く、結果を出せるケースがほとんどなのです。

 しかし、部下がやるべき仕事を上司がやることには、弊害もあります。例えば、部下のモチベーションを著しく下げるということです。いったん部下に仕事を任せたものの、そのスピードや完成度をじれったく感じてしまい、部下からその仕事を引き上げてしまい、自分でやってしまうと、部下は一気にやる気を失います。

 実は、以前の私にもそんな傾向がありました。
ある情報誌の編集デスクをやっていたときのこと。営業部から異動してきたS君という2年目社員がいました。とても明るく前向きで、頑張り屋さんなのですが、不器用なところがあって、締め切り間際になると、いつもバタバタしてしまうのです。
 私は、彼が大きな記事企画を担当したときには、その進捗状況を細かに把握して、締め切りに遅れそうになると、「この部分は俺がやるよ」と手を差し伸べて、記事作りをサポートしていました。もちろん「よかれと思って」やっていたのですが、結果的には、これがS君の成長を遅らせ、モチベーションを下げていたのです。

 恥ずかしながら、そのことに気づいたのは、半年くらいしてからでした。
頑張り屋で真面目なT君の遅刻が増え、休みがちになったのです。
 「自信をなくしているんじゃないか」という編集長からの言葉に、ハッと気づかされました。「もしかしたら自分が彼のやる気を失わせているのかもしれない」と。
 自分自身の経験でも、上司に依頼された仕事の出来が満足のいくものではなくて、上司が悪気なく「ああ、いいよ。これは自分でやるから」と仕事を上司に戻したときの情けなさや口惜しさは、今でも忘れることができません。上司に諦められたときほどモチベーションを下げることはないのです。逆に、部下のモチベーションを上げるのは「期待」です。



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●文/田中和彦(たなか かずひこ)

株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)など多数。
連絡先:info@planet-5.com
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