毎年4月は法改正が目白押しです。2026年は男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務化され、60歳以上の労働者への労災防止が努力義務となります。そして、7月には障害者の法定雇用率がアップします。企業には対応が求められますが、違反した場合や罰則について解説します。
Q.2026年4月から60歳以上の労働者への労災防止対策が、事業者の努力義務になります。努力義務なので、守らなくても問題はありませんか?
A.60歳以上の労働者への労災防止対策は、労働安全衛生法に努力義務として定められるものなので罰則はありません。ですので、守らなくても罰則を受けることはありませんが、問題がないとは言えません。さまざまなリスクが発生する可能性があり、対策を講じたほうがよいでしょう。
■安全配慮義務の責任
訴訟になった場合、行政や裁判所は厚生労働省が発表した「高年齢者の労働災害防止のための指針」などを参考に、企業が「どこまで対策すべきだったか?」が判断します。何も対策をしていないと、行政指導や損害賠償などのリスクが高まる可能性があります。
■60歳以上の労災増加
近年、60歳以上の労災は増加しています。2024年の調査によると、雇用者全体に占める60歳以上の割合は19.1%で、労働災害による死傷者数(休業4日以上)に占める60歳以上の割合は30.0%となっています。高年齢労働者は災害発生率が高く、休業が長期化しやすい傾向にあります。結果的に、企業は保険料や休業補償、社会的信用などの損失を被るかもしれません。
Q.2026年4月から男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務化されます。公表しなければ、どうなりますか?
A.罰金や給付金の徴収はありませんが、企業名が公表される可能性があります。義務化の対象は、常時雇用労働者101人以上の企業です。
■厚労省のデータベースや自社サイトで公表
義務化される公表内容は全労働者、正規雇用、非正規雇用の3区分での男女間の賃金差異と、管理職に占める女性の割合です。各企業は事業年度終了後、おおむね3カ月以内に公表する必要があります。公表は、厚生労働省の『女性の活躍推進企業データベース』(誰でも閲覧可能で、企業間比較もできる)への登録や自社のホームページなどで行います。データは毎年更新が必要で、継続的な取り組みが求められています。
■自社の採用・育成戦略の足掛かりとして
公表しなかった場合、企業名が公表されたり、行政から指導や改善命令があったりする可能性があります。企業名の公表は社会的信用の低下につながり、採用活動や取引先に悪い影響を与える可能性があるでしょう。企業は漫然と対応するのではなく、公表義務化を通じて自社の採用・育成戦略を考え、しっかり取り組んでいく必要があると言えます。
※参考コンテンツ
Q.2026年7月から障害者の法定雇用率が「2.5%→2.7%」にアップします。新たに雇用義務が発生するのは、常用労働者数37.5人以上の企業です。達成しないと、どうなりますか?
A.達成しなかった企業は給付金を徴収され、行政指導が入ります。そして行政指導に従わず、改善を2年以上怠った場合などに、企業名が公表されます。
■納付金の徴収
達成しなかった企業は、障害者雇用納付金(1人あたり月額5万円/年60万円)を支払わなければなりません。徴収対象は、常用労働者数100人超の企業です。常用労働者数100人以下の企業は達成しなくて徴収されません。障害者雇用は企業の社会的責任であり、障害者の雇用の促進と安定を図るものです。
■行政指導
違反した企業には、ハローワークから「障害者雇入れ計画」の作成命令が出されます。命令を出された企業は雇入れ計画書を提出し、計画に沿った採用を進めなければなりません。行政指導が入るのは、下記のいずれかに該当する企業で100人以上規模くらいが対象となるようです。
・障害者の実雇用率が全国平均実雇用率未満、かつ不足数が5人以上
・不足数が10人以上の企業
・法定雇用障害者数が3〜4人であって、障害者を1人も雇用していない
■企業名の公表
行政指導に従わず、改善を2年以上怠った場合などに、企業名が厚生労働省から公表 されます。公表は会社の信用に関わり、採用活動や取引への影響が考えられます。
●文/三宅航太
株式会社アイデム メディアソリューション事業本部 データリサーチチーム所属。
大学卒業後、出版社に入社。書店営業部を経て、編集部に異動。書籍の企画・制作・進行・ライティングなど、編集業務全般に従事する。同社を退社後、フリーランス編集者、編集プロダクション勤務を経て、株式会社アイデム入社。同社がWebサイトで発信する人の「採用・定着・戦力化」に関するコンテンツの企画・編集業務を担う。働き方に関するニュースの考察や労働法の解説、取材、企業事例など、さまざまな記事コンテンツを作成している。