沈黙を恐れることなく、我慢比べだと思って黙ってみること
前回のコラムで、やる気は成果に大きく影響し、それゆえに育つスピードにも大きく関係するということをお伝えしました。今回は、部下のやる気を維持させるための具体的な手法について話を進めたいと思います。
私が担当する管理職研修では、「部下のやる気を上げるために、日常的に意識していること・実践していること」について、グループ共有してもらうことがあります。その場では、それこそいろんな意見が出てきますが、彼らの話を大きく集約すると、以下の3つになる気がしています。
�〃皇亜柄蠎蠅力辰鬚�ちんと受け止めてあげる)
��感謝(「ありがとう」と声に出して言う)
��承認(相手の存在自体を認めることであり、よい面を褒める)
まず「傾聴」ですが、この重要性については、どなたも理解はしていると思います。ただ、頭で理解していることと、実際にできるかどうかは別物です。管理職研修では、上司役と部下役に分かれて、ロープレ(ロールプレイング)ワークを実施することもあります。グループ共有で「傾聴が重要だ」と言っていた上司役の人が、そのロープレでは部下役の方の話を傾聴することなく、説得モードで一方的に話をしてしまうことが意外に多いのです。
リアルな職場の面談でも、部下の方がちょっとでも黙ってしまうと、その沈黙に耐え切れずに、つい上司のほうが話をし過ぎるという傾向があります。上司という立場ゆえに、その責任感によって沈黙を打ち破らねば…ということなのですが、気持ちは分かりますけど、これでは部下の話を傾聴することにはつながりません。相手が黙ったとしても、ここはぐっと我慢して、じっくり構えて時間を十分相手に与えることを心掛けることです。
沈黙を恐れてはいけません。沈黙も使い方によっては効果的な武器になると思ってください。「○○については、どう考えてるの?」と質問して、相手が黙っているようだったら、「ゆっくり考えていいよ」と、上司のほうが黙るのです。すると、今度は部下の方が沈黙を嫌がって、ぽつりぽつりと話し始めます。我慢比べくらいに思っているといいでしょう。
上司のために部下がいるのではなく、部下のために上司は存在している
次は「感謝」です。「相談してくれてありがとう」「報告してくれてありがとう」「提出してくれてありがとう」など、上司から部下に対して感謝の言葉を伝える機会は日々たくさんあります。しかし、部下の立場からは、「そこまで上司から感謝された記憶がない」という声も聞こえてきます。部下に対して「ありがとう」の言葉が自然に出てこないようでは困ります。
「ありがとう」の語源は、「有り難い」から来ていると言われています。「有り難い」の反対語は、「当たり前」です。そういう意味では、「部下がいることを当たり前だと思ってはいけない」ということなのです。企業という組織内にいて管理職に昇進すれば、会社や人事部が自分に部下を付けてくれます。しかし、それは当たり前ではないのです。
会社という組織から離れ、もし仮に今が肩書などの通用しない原始時代だとして、「よし、今から狩りに行くぞ!」と声を掛けたときに、今の部下が自分に付いてきてくれるかどうか? そんなことを考えると、やはり部下の存在は、感謝すべき対象だということです。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
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