【第38回】追加契約をもらうための「テンション・リダクション」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
テンション・リダクションとは?
テンション・リダクションとは緊張解除のことです。自分にとって重要な出来事がある場合には、それを乗り越えるために身構え、緊張します。しかし、その一連の出来事が済んでしまうと、その身構えと緊張が解けて心理的に無防備な状態になります。こういった事をテンション・リダクションといいます。
●解説
緊張を強いられる出来事が去っていった後、緊張から解放され気を抜くという状態は自然なことです。学生時代テスト前は必死に勉強したが、テストが終わった途端、気が抜けて勉強しなくなったという経験をしたはずです。これをテンション・リダクションといい、緊張の糸が切れた状況です。
これは社会人になってからもたびたび経験します。例えば大事な会議を任され、必死に準備します。苦労のかいもあり、大成功。ここまではいいのですが、緊張から解放されたことでそれまで集中していた注意力が散漫になり、つまらないミスをしてしまう事もあるのです。せっかくの会議の功績も帳消しです。「家に帰るまでが、遠足」というように最後まで気を抜かない事が大切です。
テンション・リダクションを営業のケースでお話してみましょう。以前、お客さまと商談していたときの事です。そのお客さまは事あるごとに「絶対に2,000万円を超えないように考えます」と言っていました。一般的な建物を検討するお客さまの多くは「予算は2,000万円以内」と考えていますが、1円たりともオーバーしないというお客さまは珍しかったのです。
その後、商談を重ね、予定どおり消費税を含め、ピッタリ2,000万円で契約しました。その後です。奥さんが意外な事を言い出しました。 「2,000万円にこだわってきたけど、せっかく建てるのだから少しぐらいオーバーしてもいいんじゃない?」
初めはかたくなに拒否していたご主人も「そうだな、なにも数字にこだわる事はない」と最後は折れます。最終的には契約時から300万円ほど追加して、2,300万円で家を建てたのです。このような事はよく起こります。お客さまによっては予算を500万円もオーバーする事例もありました。
私自身も経験しましたが、一度購入を決めると気が緩みます。以前旅行に行ったときも「せっかく行くのだから少しいい料理にしよう」「めったに行けない場所だしこのオプションをつけよう」と、初めは予算どおりだったのに、気づけばかなりのオーバーです。結局高い旅行になりました。
お客さまは契約まではしっかりしているのに、契約が決まってしまうと途端に気が緩む傾向にあります。ある程度はいいのですが、行き過ぎてしまった場合は歯止めをかける事も営業マンの大切な役目の一つです。「このオプションは無駄になりますから、やめましょう」とアドバイスしてくれる営業マンは契約後もさらに信頼度を増します。こうした信用がお客さまからの紹介を生むのです。
菊原智明●営業コンサルタント/関東学園大学経済学部講師。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。7年間のダメ営業マンから4年連続トップ営業マンへ。現在は【訪問しないで売る】営業のコンサルティングと大学生に向けて【営業の授業】を行っている。著書に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(アスカビジネス)など多数。
http://www.tuki1.net/
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