【第40回】一度買ったらやめられない「コンコルド効果」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
コンコルド効果とは?
コンコルド効果とはある対象への金銭的・精神的・時間的投資をし続けることが損失につながると分かっているにもかかわらず、それまでの投資を惜しみ、投資をやめられない状態を指します。
●解説
ある健康食品会社の社長から「うちは3週間無料サンプルキャンペーンをしているのですが、多くのお客さまがその後も継続してくれるんです。体にいいことを続けるとその後も続けたくなるものですから」という話を聞いたことがあります。
私自身も経験したことがあります。無料サンプルでもらったサプリメントを飲み始めたところ、飲んでいると調子がいい気がします。1週間もしないうちに無料サンプルは終わったのですが、飲まないと調子が悪くなるような気がして、サプリメントを購入したのです。
そしていまだにそれを購入し続けています。続けているだけでなく妻や親に紹介までしています。きっかけは無料だとしても一度続けた事を途中でやめてしまうと損するような気持ちになります。このようなこともコンコルド効果の1つといえます。
コンコルド効果は金銭的な話だけではありません。時間的投資も同じような心理が働きます。
競合が多かったお客さまと商談していたときの事です。そのお客さまは5社以上の会社と商談をしていました。私も他社と同様、要望をヒアリングしてそして似たような提案をします。建物のグレード、金額、装備など各社横並びで、全く差別化できていません。泥仕合になるのは目に見えています。
《このお客さまにはあまりハマってはいけない》と思いながらも、気づけば毎週お会いするようになり、結果かなりの時間と労力を費やしていたのです。これで競合負けしたら大変なダメージでしたが、このお客さまは運よく契約となりました。
契約後、お客さまに聞いてみました。私「どうして私と契約していただいたのでしょうか?」お客さま「(少し考えて)いろいろと迷ったのだけどね、毎週同じ時間に菊原さんと会っているうちに決めちゃったよ」
私自身もかなりの時間を費やしましたが、それはお客さまも同じ事です。お客さま自身にも《これだけ時間をかけて検討したのだから、ここに決めよう》という気持ちが生まれたのでしょう。このようにコンコルド効果は時間にでも同じような効果があるのです。
人は一度続けたものは今まで投資したものに対してリターンを求めます。今まで投資した金額や時間を無駄にしたくないと思うため、損をしてまでも続ける事もあるのです。
また、続けているうちに未知なもの、未体験のものを受け入れず、現状は現状のままでいたいとする心理を持っています。こうした心理を現状維持バイアスといいますが、コンコルド効果もこの1つです。 このような心理になればあなたの商品を長期にわたり購入してくれることになるのです。
菊原智明●営業コンサルタント/関東学園大学経済学部講師。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。7年間のダメ営業マンから4年連続トップ営業マンへ。現在は【訪問しないで売る】営業のコンサルティングと大学生に向けて【営業の授業】を行っている。著書に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(アスカビジネス)など多数。
http://www.tuki1.net/
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