【第43回】事前情報をうまく利用するための「プライミング効果」
商談や接客時など、ビジネスシーンに応用できる心理学の知識を解説します。
プライミング効果とは?
プライミング効果とは先行する刺激(プライマー)の処理がのちに与えられる同一刺激もしくは関連する刺激(ターゲット)に影響を及ぼすというものです。 例えばおいしいと評判のラーメン屋さんに行けば、たとえ普通の味だったとしてもおいしいと錯覚するというようなことです。
・解説
商品を購入するときにテレビやネットで見たことがある商品を思わず手に取ってしまった、という経験をした事があるのではないでしょうか?
まったく知らない商品より、聞いたことのある商品の方が安心はあるものです。それがいいイメージであればあるほど、他の商品より魅力的に映ります。その結果その商品は購買率が高くなります。大企業が大金をかけて宣伝するのはお客さまにこうした効果を狙っているからです。
これは反対の事も起こります。CMに出ていたタレントが嫌い、もしくは友人から悪い口コミを聞いたなど、事前に悪いイメージを持たれた場合は、実際の商品を手にしたとき、他の商品より劣っているように感じてしまうのです。こういった事前の情報に左右される事をプライミング効果といいます。
このプライミング効果を営業活動に応用してみましょう。
既に入居しているお客さまからご両親をご紹介いただいたときの事です。初めて出会ったときからいい感じの人で商談もスムーズに進みます。話を進めていると「聞いているとおり、資金関係に詳しいですね」と言われました。
話を聞くと娘さんから「菊原さんは資金計画に詳しいから、一番いいローンを組んでくれるよ」と聞いていたと言います。そのおかげで商談も進めやすく、ほとんど何の問題も無く契約まで進みました。
このように事前にいい情報が伝わり、いいイメージを持ってもらうと商談は非常に進めやすくなります。
逆に事前に悪い情報が伝わり、悪いイメージを持たれるとやりにくくなります。 以前、仲が良くなったお客さまから友人を紹介してもらったときの事です。なぜか話がスムーズに進みません。後から分かったのですが、私のことが「いい加減なところもあるけど、よくやってくれるよ」と伝わっていたのです。
仲がいいため、愛嬌(あいきょう)で言ってくれたのでしょうが、友人にはそう伝わりません。「いい加減なところもある」という情報が強くインプットされたことでうまく信頼関係を構築できませんでした。結局この商談はまとまらなかったのです。
私はその後、お客さまから紹介してもらうときは必ず「一番いいローンを提案してくれる営業マンだよ」とお伝えください、とお願いするようになりました。 強みを知ることでお客さまも紹介しやすくなるのです。この一言で、劇的に印象は変わります。それからは紹介してもらうお客さまに会う前からいいイメージを持ってもらうようになったのです。
お客さまから紹介をいただいたときは、自分の強みを前もって伝えてもらいましょう。
その一言で紹介していただいたお客さまがうまくいくか、失敗に終わるかが決まります。
菊原智明●営業コンサルタント/関東学園大学経済学部講師。大学卒業後、大手住宅メーカーに入社し、営業部に配属。7年間のダメ営業マンから4年連続トップ営業マンへ。現在は【訪問しないで売る】営業のコンサルティングと大学生に向けて【営業の授業】を行っている。著書に『訪問しないで「売れる営業」に変わる本』(大和出版)、『トップ営業マンのルール』(アスカビジネス)など多数。
http://www.tuki1.net/
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