第44回「社内一の嫌われ者」
働く個人にこれまでのキャリアや仕事観を聞き、企業が人を雇用する上で考えなければならないことを探ります。
野上涼香さん(仮名・29歳)は上司のやることなすことが気に障り、いら立つことが多かった。それは、野上さんの所属する部署全員に共通する問題でもあった。
「私のいる部署は4人で、女性が2人、男性が問題の上司を含めて2人です。上司以外の3人は仲が良く、仕事帰りに飲みに行ったりしています。3人とも上司には困っていますが、解決が難しい問題なので悩んでいます」
IT関連企業に勤める野上さんは、広報部に籍を置いている。会社の認知度を上げるためにさまざまな施策を企画したり、自社のホームページの管理などを担当している。
「今の会社は3年前に転職で入りました。その前は新卒で入った食品関連の卸会社で、営業事務をしていました。転職した理由は、一通り仕事を覚えてしまい、それ以上のステップを望めなかったからです。もともと広報に興味があったので、上司にかけあって異動を訴えたのですが、うまくいきませんでした。待遇面での不満はなかったので悩みましたが、このままでは成長できないと思い、転職することしたのです」
初めて上司に会ったときから、野上さんは違和感を覚えたという。面接での会話が、かみ合わなかったのだ。
「面接官は2人で、上司と人事担当者でした。人事の方とは普通に話せたのですが、上司とはうまく話せませんでした。質問の意味が分かりにくく、人事の方も不思議そうな顔をしていました。入社後、人事の方とその話になったのですが、“よく分からない質問だったよね”とおっしゃっていました」
野上さんが応募した求人は欠員が出たためで、前任者は上司の対応が原因で辞めたと聞いた。
「辞めたのは、新卒で入った方だったそうです。もともと仕事ができるタイプではなかったようですが、上司が必要以上に厳しく指導したことで精神的にふさぎがちになり、退職したと聞きました」
本人にも問題はあったが、上司の指導は理不尽な部分もあり、はたから見ていて気持ちのいいものではなかったという。
「電話の受け答えを細かくチェックしたり、書類のささいなミスについて延々と説教をしたり、度を越した部分があったようです。当時は同僚も入社して1年足らずだったこともあり、上司の態度に問題を感じていたものの、口にすることはできなかったそうです」
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●取材・文/三宅航太
株式会社アイデム人と仕事研究所 研究員。大学卒業後、出版社の営業・編集、編集プロダクション勤務を経て、2004年に株式会社アイデム入社。同社がWEBで発信するビジネスやマネジメントなどに役立つ情報記事の編集業務に従事する。人事労務関連ニュースなどの記事作成や数多くの企業ならびに働く人を取材。
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