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2015年12月、職場でのメンタルヘルス対策として、労働者の心理的な負担の程度を把握するストレスチェックが義務化されました。近年、企業にとってメンタルヘルスの重要性は増しています。豊富な臨床経験を持つ著者が、メンタルヘルスの基礎を解説します。
第4回では「ストレスの発見方法」について述べました。第5回では、そのストレスとどのように付き合っていったらいいかについて考えましょう。
最も簡単で有効な方法は、ストレスが多くても元気で、成果を上げている人を観察して、いいところを「マネ」してみることです。
それでは「ストレスに強い人」について、私が行った調査結果を参考にしてみましょう。
ストレス状態を「うれしい」と受け止める?
成果を上げている経営者は、多忙でかつプレッシャーがかかり、常にストレス状態にあると見られています。そんな経営者たちにストレス診断を行ってみました。総合心理教育研究所とカナダストレス研究所とで開発した「THQストレス診断ツール」を使用して測定しました。
その結果は良好な心身の状態であり、ほとんどストレスは測定されませんでした。一般のビジネスパーソンと比較して、どの項目も良い状態が示されました。格別これといった「ストレス解消法」を実施しているわけでもないのです。なぜ?どうして?ストレスは多いのでしょう?という疑問が湧いてきます。
1つだけ特徴がありました。それはストレスに対する認知、つまり受け止め方が異なっていたのです。対象になった経営者たちは、つらい仕事や困難な状況に遭遇して、多くのビジネスパーソンが「ストレスだな」と思える状況になったとき、逆に「うれしい」と受け止めていました。つまりこれは、ストレスをエネルギーや成長のバネにするということです。
ストレッサーに対する認知の仕方で変えられる
これまでの回でご説明してきたように、「法制化されたストレスチェックの必須測定3領域」は、(1)ストレスの原因(ストレッサー)、(2)ストレスの反応、(3)サポート要因です。しかし、一番重要な要因は、「認知」なのです。
例えば、あなたにとって、嫌な上司がいると「ストレスの原因」になります。仕事をしていると、イライラしたりして職場にいるのが苦痛になります。眠れなくなります。これが「ストレス反応」です。そこにやさしい夫や妻、同僚がいて、「大変だね」とねぎらってくれると少しストレスが緩和されます。これが「サポート要因」です。
しかし、同じ職場で上司にストレスを感じていない人もいるわけです。受け止め方が異なっていて、「厳しいが良い上司」と感じているのかもしれません。つまりストレスは、受け止め方により、ストレスホルモンであるコルチゾールを増加させます。逆に幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンを減少させ、うつ状態に導くのです。
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●文/佐藤隆(さとう たかし)
株式会社総合心理教育研究所 代表取締役、臨床心理士、精神保健福祉士
日本鋼管病院の精神衛生室および同社人事部兼務にて、日本のメンタルヘルス対策草創期の実務に携わる。慶應義塾大学、明治学院大学にて非常勤講師、東海大学短期大学部にて学科長を務める。学術活動として300社以上の企業および官公庁を対象に、リーダーシップおよび管理職のメンタルヘルスに関する調査研究を実施。多数の企業における人事部・管理職向け研修や人事システム立案に携わる。現在グロービス経営大学院大学教授、ハンス・ セリエ財団カナダストレス研究所上席客員研究員、財団法人パブリックヘルスリサーチセンター客員研究員、日本産業精神保健学会会員。著書に『臨床心理学とストレス科学』(エイデル研究所)、『ビジネススクールで教えるメンタルヘルスマネジメント入門』(ダイヤモンド社)、『職場のメンタルヘルス実践ガイド』(ダイヤモンド社)など多数。
http://www.sipe-selye.co.jp
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