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ココロの座標/河田俊男

第30回「すぐそばにあるメンタルリスク」

人の心が引き起こすさまざまなトラブルを取り上げ、その背景や解決方法、予防策などを探ります。(2018年9月26日)

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 食用と勘違いして、口にしてはいけない植物を食べ、食中毒になる。川で遊んでいたら、川底に渦巻く波に流され、死にそうになる。日常生活には、さまざまな危険が潜んでいる。しかし、私たちは自分だけは危険な目にあわないと信じている。

 

 

先輩から教えられて

 

 28歳の貴史は、広告代理店の営業をしている。最近はネットの広告に押され、自分の担当する媒体の売上が伸びなくなっていた。転職を考え、悩みを先輩に打ち明けた。すると先輩は「自分も同じ気持ちだ。つらいときはこれを飲んでる」と言って、市販の栄養ドリンクをおしえてくれた。

 

 早速、薬局でドリンクを買い、飲んだ。すると先輩の言うように、クサクサとした嫌な気分やつらい気持ちが消える気がした。それ以来、貴史は仕事中につらくなると、ドリンクを飲むようになった。そのおかげで、辞めようとしていた会社を続ける決心ができた。どの会社でもつらいことはある、だったら慣れた会社で頑張ろう。そんな気持ちになれた。

 

 

 

 

 やがてドリンクの量が1日1本から2本に増えた。先輩から「1本にしろ」と言われていたが貴史は守れず、日によっては3本飲むこともあった。そしてドリンクを飲まないと、まったくやる気が出なくなってきた。仕事が休みの日でも、飲まないと禁断症状が出てくるようになった。

 

 貴史は恐ろしくなり、飲む本数を減らそうと思った。しかし禁断症状がつらく、病院に行く決心をした。貴史は薬物依存症と診断され、医師に長期間の治療が必要になると言われた。

 

 

妻と息子がいつの間にか

 

 48歳の博之はIT企業の役員をしている。彼は「最近、妻と息子の様子がおかしい」と訴えてきた。妻は、受験中の息子のことを友人に相談していた。すると友人から「集中できるようになるジャムがある」という話を聞いた。妻は信じなかったが、友人からそのジャムをもらったという。早速、友人からもらったジャムを紅茶に入れ、「集中力がつくらしいのよ」と言って息子に飲ませた。うそでも、暗示のように効くかもしれないと思ったからだ。

 

 息子は国立大学の医学部を目指して浪人をしており、長時間集中して勉強をしなければならなかった。息子自身も、集中力の持続には悩んでした。勉強していても、夜は疲れて眠くなってしまうからだ。
 ジャム入りの紅茶を飲むようになった息子は夜も眠くならず、勉強に集中できるようになった。

 

 また妻は、息子の受験勉強のストレスと更年期障害が重なり、自律神経失調症状に悩まされていた。婦人科で薬はもらっていたが、期待する効果は得られなかった。そこで、彼女も紅茶にジャムを入れ、飲んでみることにした。すると、体の調子がよくなり、今まで以上に活動的になった。彼女は友人から定期的にジャムを譲り受け、息子と自分で使った。だんだん使用量が増え、最初は小さじスプーン1杯だったが大さじスプーン3杯になった。

 

 

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●文/河田俊男(かわだ としお)
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長、人と可能性研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。

 

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