■相談
コロナ禍の影響で、うちの会社もリモートワークを本格的に導入し、交替制で週3日は自宅勤務を基本にし、全体で出社している人数の割合を40%くらいまでに抑えてきています。
そんな状況で、先日、リモートワーク中の部下が締め切りを2日過ぎて提出書類を添付データで送ってきたので、「締め切りから2日も過ぎているのに、何の説明もなく、しれっとメールしてくるのはどういうことだ?」と叱ったら、突然カメラもマイクもオフになり、回線そのものが切れてしまいました。こちらからメールしても電話しても出ない状況です。
こんな場合はどうしたらいいでしょうか?
■回答==========
実はリモートワークにおける部下の指導育成面で、最も難しいのが「叱る」という行為です。なぜなら、実際の職場のようなリアルな場では、相手の表情やちょっとした言葉尻に気を向けることができますが、リモートの場合、パソコン上の画面だけでは相手の受け止め方を把握しづらいからです。
また、叱ったあとのフォローもしづらく、叱った方も叱られた方も、お互いに消化不良になりがちです。私も、部下を叱ったときなどは、「ちょっと食事にでも行くか」とその部下を誘い、「叱ったのは期待しているからだ」ということをストレートな言葉ではなく、態度で表して、部下をフォローしていたものです。
なので、今回の相談者の方も、部下を叱ったり正したりするのなら、出社しているタイミングのほうがよかったかもしれません。
どうしてもオンラインで叱らなくてはならない場合は、面談の時間が延びてもいいように、お尻の時間が気にならない時間帯が望ましく、「次の会議に出なきゃならないから」など、話が途中で終わったり、尻切れとんぼになったりするアポイントの入れ方は避けるべきでしょう。
今回のように相手から切られてしまうのは仕方ないとしても、部下が十分に叱られた内容を消化しきれていないタイミングで、上司のほうから「じゃあ、ちょっと時間がないから」と、急にオンライン面談から退出されてしまっては、置き去りにされた部下は、モヤモヤを抱えたまま、次の仕事に取り掛からなくてはなりませんし、この状態で、いい仕事ができるとは到底思えません。
叱るときは、なにより終わり方が大切です。
部下が叱った内容をしっかりと受け止めて、心の底から反省の気持ちになり、二度とそうならないように「今後を見据えたアクション」につながるであろうことを見届けるまでが上司の役割です。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。