人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2022年5月26日)
オンラインでは、部下の受け止め方が把握しづらい
前回、テレワークで新入社員を教えることの難しさをお伝えしましたが、多くの方から反響をいただいたので、今回は、テレワークで部下を叱ることについて、考えていきたいと思います。
コロナ禍の影響によりいや応なくテレワークが進んだ現状で、管理職の方たちからの相談で比較的多いのが、「田中さん、オンラインで、部下をどう叱ればいいですか?」というもの。部下を叱ることは、リアルな職場でさえ難しいのですから、テレワークではなおさらです。
個人的には、「部下を叱る場合、極力オンラインではなく対面の方が望ましいとは思います」とお伝えしています。なぜかというと、叱るときというのは、相手の表情やちょっとした言葉尻など、受け止め方を確認しながらトーンを変えていくものなのですが、オンラインでは、その受け止め方が把握しづらいからです。
上司が叱ったあと、「(指摘したことについて)分かった?」と、部下に最終確認したとき、部下が目を見ようとせずにうつむいている場合などは、たいてい「納得していない」というサインです。
また、「うーん…」と言葉に詰まったり、「まあ、分かりました」や「分かりましたけど…」という返事だったりすると、やはりふに落ちていないと考えるべきでしょう。
「まあ、分かりました」の「まあ」が実はくせ者で、部下の心の言葉は、「まあ、この場は分かったことにしておきますから、早くこの話を終わりましょう」という感じだと思います。「分かりましたけど…」のケースも、「けど」に続く言葉は、たいてい「分かりましたけど…(本当は納得していません)」だったりします。
「まあ」や「けど」が付いてくると、要注意だと思った方が賢明です。
心の底から「ああ、自分が間違っていました。本当にそのとおり。上司の言うとおりです」と受け止めたなら、シンプルに「分かりました」という言葉だけが素直な形で出てきます。相手の目を見れば、すぐに分かるものです。こういうときには、「はい、これでおしまい。頑張ろう」と、あっさり切り上げればいいのです。
オンラインでは、このあたりの相手の受け止め方の微妙なニュアンスが伝わってこないのが困りものなのです。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。