第10回「居眠りなんてしてない!」
人間は疲れたら休養をとらなければならない。休息をとらないと、仕事に支障をきたすこともある。
どんな人も疲れたら休憩や休養、休暇をとらなければならない。効果的に休息をとらないと、仕事にうまく集中することもできない。
しかし、仕事によっては休息をとるタイミングが難しい。中には休みがうまくとれず過労が蓄積して、精神的に破綻してしまう人もいる。
会議室で居眠り
IT関連会社での出来事だ。人事担当者のもとにある社員から「派遣社員が、会議室で昼寝をして仕事を怠けている。しっかり注意してほしい」という依頼があった。早速周囲の社員に聞き取り調査をすると、その派遣社員はやはり会議室でさぼっている様子だ。寝ているのを見た、さぼっていた、などという答えが返ってきた。
そこで、その派遣社員と派遣会社の担当者を呼んで注意をすることになった。「今後、居眠りをしてさぼったときには、報酬を下げるか、契約を断ることもあります」と警告したのだ。
するとその派遣社員は、「私は居眠りなんてしていません。考えごとをしていただけです」と言い張った。「素直に認めてこれから注意すればいいことです」と人事担当者が言うと、派遣社員は「言いがかりです。これは社内いじめです」と逆切れしてしまったのだ。
思わぬ方向に展開してしまったことに人事担当者は驚いた。派遣社員は正式な謝罪を求めてきた。「納得できなければいじめで訴える」などと大声で怒りをあらわにしたのだ。
専門医の診断を受ける
人事担当者は、職場の担当上司に十分に派遣社員の話を聞いて、うまく対応してほしいと現場に話を戻した。
本当はどうだったのか、分からない。しかし、会議室で隠れて寝ていたのは、さぼっていたと思われても仕方のないことだ。
しかし、本人の言うとおり考えごとをしていて、一瞬寝てしまったのかもしれない。
問題は、まず先に「健康上の理由があったかもしれない」ということを考えなかったことだ。夜中に眠らずに活動して、睡眠と覚醒のリズムが狂い、概日リズム障害になっていた可能性もあるのだ。そのため、昼間につらい眠気が襲ってきたことも考えられる。その他に不眠症、過眠症などの睡眠障害も考えられる。
まず、最初に身近な上司が、「体調が悪いみたいだけど大丈夫か、病院に行って検査してきたほうがいいぞ。自分も一緒に行くから行こう」と言って、病院で適切な診断と治療を受けさせるべきだった。
睡眠障害には、ナルコレプシーという危険な睡眠障害もある。突然、睡眠発作が起こる睡眠障害だ。やはり専門医に診断を受けるのが先決である。
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●河田俊男
1954年生まれ。心理コンサルタント。1982年、アメリカにて心理療法を学ぶ。その後、日本で心理コンサルティングを学び、現在、日本心理相談研究所所長。また、日本心理コンサルタント学院講師として後進を育成している。翻訳書に「トクシック・ピープルはた迷惑な隣人たち」(講談社)などがある。
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