1年にわたり連載してきた本コラムですが、今回が最終回です。これまでの内容の振り返りと人事労務管理の今後について、まとめていきます。
第1回〜6回までは「HRテックとは何か?」という全体像から、労務管理HRテックを活用することで「人事労務業務にどのような変化をもたらすのか?」について述べました。「採用管理」から始まり、「雇用契約書の締結」「入社・退社等の手続き」「勤怠管理」「給与計算」「年末調整」という業務の流れに沿って、それぞれの仕事で活用できるHRテックを紹介しました。
7回目以降はLGBTQの基礎知識、採用・社内施策のポイント、障害者雇用、外国人雇用など、多様な人材が活躍する職場環境・体制の構築のためのダイバーシティ&インクルージョンの推進について、解説しました。
HRテックとダイバーシティ&インクルージョン
近年、HRテックは企業の人事労務管理に広く活用され、業務の効率化や生産性の向上に寄与しています。また、ダイバーシティ&インクルージョン推進の観点からも、大きな役割を果たしています。HRテックによって採用や人材育成、評価などの業務が効率化され、企業は、これまで以上にダイバーシティ&インクルージョンの推進に注力することができるようになってきています。
例えば、採用においては、人事担当者が候補者の書類選考や面接に費やす時間を短縮することができ、より多様な候補者と出会う機会を増やすことが可能になります。情報の共有がスムーズになり、複数人の人事担当者が連携して業務を進めて行くことができます。
また、AIを活用した採用面接や業務の自動化など、高度なHRテックの活用により、効率的かつ公正な採用が可能になりました。
多様なニーズに応える
HRテックは、さまざまなニーズにも応えることができます。
近年、技術革新やビジネスモデルの変化に対応できる人材の確保の観点から、リスキリングが注目されています。
リスキリングとは、働き方の変化や技術の進展により、今後新たに発生する業務や職業に適応するために必要とされる能力・知識を習得することや、習得させる取り組み・教育のことを指します。企業には、リスキリングによって労働者のスキル向上を図ることが求められています。その際にもHRテックを活用して場所や時間に縛られずに学べるオンライン研修や学習プラットフォームを導入することで、育成の機会を平等に提供できます。
また、多言語化やアクセシビリティに配慮したウェブサイト、アプリケーションを開発することで、外国人労働者や障害のある人、高齢者などのニーズにも応えることもできます。
採用時や既存社員から収集したデータを分析することで、「どのような人材がどのような成果を上げているのか」「どのような課題があるのか」を把握し、より戦略的なダイバーシティ&インクルージョンの推進を行うこともできます。
●文/飯塚知世(いいづか ともよ)
社会保険労務士、スピカ社会保険労務士事務所代表
大学卒業後、音楽制作会社にてアーティストマネジメント、バックオフィス業務全般に従事する。2014年社労士資格取得、2017年スピカ社会保険労務士事務所を設立。HRテクノロジーの導入支援や職場のダイバーシティ推進に力を入れ、すべての人が自分らしく働ける会社作りをサポートしている。特技はヨーヨー。大学在学中からプロのパフォーマーとして活動し、メディア出演なども行う。2020年、2021年全日本ヨーヨー選手権大会女性部門優勝。
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