ポジティブフィードバックと聞いて、「それって褒めればいいのですか?」とご質問を受けることがあります。大切なのは、褒めるのではなく、相手を承認することです。承認によって、「見てるよ」「認めてるよ」「信じてるよ」を伝えましょう。
褒めればいいの?
ポジティブフィードバックについて、
「褒めるのは下手だし、恥ずかしい」
「思ってもいなくても、とりあえず褒めておけばいいのかな。気がひける」
と思う方、ご心配なさらないでください。ポジティブフィードバックとは、相手を承認することです。褒めることも含まれますが、それ以外の方法でも承認することができます。相手に伝えたいのは「褒めてるよ」でなく、「見ているよ」「認めているよ」「信じているよ」ということです。どうしたらその気持ちが伝わるでしょうか? ポジティブフィードバックの「4つの承認」をお伝えします。
4つの承認
(1)結果承認
相手の成果・結果を承認することです。言葉にすると「売上に貢献してくれたね」「お客さまから喜びの言葉を頂戴したよ。ありがとう」などで、これは多くの方が言ったり、言われたりしたことがあるでしょう。とはいえ、誰しも常に成果・結果を出しているわけではありません。そんなときは、以下の3つの承認があります。
(2)行為承認
相手が結果を出しているかどうかに関わらず、相手の「行為」に対して肯定的な言葉をかけることです。「周りの部署とうまくコミュニケーションをとってくれているね」「積極的に質問してくれて、周りの人も助かっていると思うよ」など、結果へのプロセスで行っていることに注目するものです。
(3)存在承認
相手の存在を承認し、大切に扱うことです。例えば笑顔で挨拶をしたり、アイコンタクトをするだけでなく「疲れているようだけど大丈夫?」や「何か手伝えることはある?」など、積極的に相手を気遣う言葉がけをすることです。失敗した部下や結果の出ていないメンバーとのコミュニケーションは悪くなりがち。そんなときこそ、意識して相手の存在を承認しましょう。
(4)可能性承認
将来の可能性について信じ、期待し、それを肯定的に応援することです。いわゆるネガティブフィードバックです。改善ポイントを伝える根底には、相手に対して「信じているよ」「期待しているよ」という気持ちがあるからではないでしょうか。例えば「お願いしている週報の提出が遅れて困っている。君なら期限までに提出できると信じているけど、何が遅れる理由だと思う?」というように、「期待しているから注意をしている」といった可能性承認の形で伝えると、受け取る側のやる気や自信を損なわず、気持ちを鼓舞することにつながるはずです。
人は他者から承認されると、やる気がアップして成果が出やすくなるものです。すでに結果が出ていても、そうでなくても、部下に承認していること言葉で伝えてください。
●文/ヴィランティ牧野祝子(まきの のりこ)
国際エグゼクティブコーチ、株式会社グローバル・キャリアデザイン代表
米コロンビア大卒、仏INSEAD(欧州経営大学院)MBA修了。イタリア・ミラノ在住。障害児を含む3児の母。20年間に渡り、国内外10カ国で米系戦略コンサルティングファーム、仏系化粧品会社、英系酒販会社、伊系アパレル企業でマーケティングや新規事業の立ち上げなど、さまざまなキャリアを積む。さまざまな仕事で培った経験やノウハウを活かし、国際エグゼクティブコーチとして独立。考え方や事情の異なる人たちが一緒に仕事をするには、個々のよさを引き出す環境を作ることが必要と考え、ポジティブフィードバックを活用したコーチング・スキルを伝える活動を行う。法人・個人を問わず、グループ面談やセミナーなどを年間2000セッション実施。著書に『国際エグゼクティブコーチが教える人、組織が劇的に変わるポジティブフィードバック』(あさ出版)。