人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2023年7月20日)
ビジネスを取り巻く環境が激変し、予測不可能な時代に
私の知り合いに、こんなカップルがいます。
結婚して間もないAさんは、17時すぎになると必ず携帯にメールが届くそうです。「今日は何が食べたい?」と。営業職のAさんはたいてい仕事中なので、簡潔に「今日はガッツリ肉で」とか、「暑いから、そうめん」などと返信します。
結婚相手のBさんは公的機関の事務職なので、いつも定時退社です。帰りに近所のスーパーで買い物をして、食事の用意をして待っていてくれるとのこと。残業を早く終えて20時までに帰宅するのが日々の目標なのだと、Aさんはうれしそうに話をしてくれます。
さて、あなたはAさんとBさんの人物像について、どんなイメージを頭に浮かべましたか?
この話については、あとで解説しますので、まずは今回のテーマである「変革型リーダー」について少し補足しておきます。

近年のリーダーシップ論では、メンバーの成長や利益のために奉仕する支援型のサーバント・リーダーシップ、利己的ではない倫理観を持ち、自身の信念や価値観を軸とするオーセンティック・リーダーシップ、必ずしもリーダーを固定せず入れ替わり可能なシェアド・リーダーシップ…などなど、さまざまあります。
とりわけ今、多くの企業で必要とされているのが変革型リーダーシップです。現状を変えていくために、メンバーや周囲の人たちに大きな影響力を発揮することが、リーダーに期待されているということなのです。
現在、変革型リーダーが求められているのは、ビジネスを取り巻く環境が激変しているということが大きな要因です。
もともとはテロに対する軍事的な用語だったVUCA(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性)が、ビジネスの世界でも使われだしたのは、入念にリスク対策をしても、それを上回る予測不可能な経営環境の変化が起きており、何をやるにしても、「今までがそうだったから」が理由にならなくなったからです。
つまり、どの企業も変革型リーダーによる発想の転換やイノベーションが必要になってきたわけです。そして、その発想の転換やイノベーションを阻むのが、既存の常識や当たり前に縛られて新しい考えを排除してしまう「思い込み」だったりします。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。