採用選考の常識や通念はアップデートされずに根付いているものが多く、合理性を伴わないものも少なくありません。既成概念から脱し、自社に必要な人を採用するための、新しい考え方や知識を解説します。(2023年10月10日)
採用面接では「応募者の見極め」に集中できる場所が必要不可欠
採用面接では、何を置いても応募者の人間性や資質を見極めることが最優先されるべきです。そして、入社後に向けた情報交換は、あくまでもそれをパスした「採っても大丈夫」と思える応募者を対象に行われるべきだと思います。
しかし一般的には、選考と情報交換を同時にやってしまおうとするような採用面接が多いと思われ、その情報交換の中で応募者の意欲などを見極めようとする面接官も少なくありません。しかし、まだどんな人かも分からない応募者と入社後に向けて前向きな話をすることには、無理と無駄が生じます。また、その情報交換の中で応募者が見せる「美しい発信」がバイアスとなって、面接官の判断を狂わせる可能性も否定できません。
採用選考においては、応募者をしっかり見極める場所と、入社後のミスマッチを防ぐべく細やかに情報交換する場所を、別々に設けるべきだと思います。応募者を見極める場と位置付けた面接では冷徹な心で応募者と徹底的に向き合い、その通過者を対象にした次の面接を、楽しく前向きな話し合いの場にできれば理想的でしょう。
応募者を知ろうとするパワーに欠ける昨今の採用現場
昨今の採用現場では、応募者の本質を知ろうとするパワーが相対的に薄まっているような気がします。大企業の中には、「見栄えの良い人を大量に集めること」が目的化されているようなところも散見されます。「選べるほど応募者が集まってくれない」の一言を盾に思考停止に陥り、そもそも選ぶことを放棄している中小企業もたくさん見てきました。
応募者の本質に向き合わず無防備に採用してしまうことの怖さを、きっと誰もが分かっています。それなのに、なかなかそこへの注力配分が高まらないのは、「人は分からない」「どこを観ればよいか分からない」などという諦めがあるからなのでしょうか。
人を見極めようとする取り組みに、完璧を求めることはできませんが、心理学などの力を借りて、人の行動を理論的に捉え、完璧に近づけようとすることは可能です。大事なことから逃げず諦めず、「できることをできる限り頑張ろう!」というマインドセットが、まず何よりも求められると思います。そして、その実践に向けての第一歩として、まずは「応募者を見極めることに全力を注ぐ採用面接」を採用選考プロセスの中に常設することから始めてみてはいかがでしょうか。
●文/奥山典昭(おくやま のりあき)
概念化能力開発研究所株式会社代表、組織再編支援コンサルタント、プロフェッショナルアセッサー
大学卒業後、商社での海外駐在、大手電機メーカー、人事系コンサルティング会社などを経て、1999年に概念化能力開発研究所株式会社を設立。人の能力や資質を数値化して客観的に適性を評価する人材アセスメントと、組織に必要な人物像を抽出する採用アセスメントを駆使し、企業の組織再編や採用活動を支援。現在、応募者の本質を見抜くノウハウを企業の経営者や採用担当者に伝える採用アセスメントの内製化支援に注力している。著書に『デキる部下だと期待したのになぜいつも裏切られるのか』(共著・ダイヤモンド社)、『間違いだらけの優秀な人材選び』(こう書房)、『採るべき人 採ってはいけない人』(秀和システム)、『採るべき人採ってはいけない人第2版』(秀和システム)
https://conceptual-labo.co.jp