「昇進したいと思わない若手社員が目立つ」「フリーターが正社員になりたがらない」など、企業の幹部の方から“出世したがらない若手人材”が多い、との声を聞く機会が増えました。これは、価値観が多様化したことと、物心共に豊かな時代となり、人を蹴落としてまで出世する必要性を感じなくなったことが大きな要因と考えられます。
企業に勤めているのであれば、昇進して管理職になり、役員を目指すのが定石であるとするのは、バブル世代前後の人たちの生き方なのかもしれません。
なぜ、若手世代の出世欲が低いのでしょうか?
ワークライフバランスが崩れるのが嫌だから
仕事と生活(プライベート)を、切り離して考えたいという人は多くいます。出世すれば、自分の時間が仕事によって浸食されると思い、それを避けたいと考えているのでしょう。
また、近年、企業で「働き方改革」が進むのと同時に、ワークライフバランスの大切さが、マスコミやネットメディアで大きく取り上げられるようになりました。それに触発されて、自分の人生を仕事一本で終わらせたくないという人が増えたのも原因です。
責任を伴う仕事をしたくない
20年以上にわたり、企業に勤めている人たちの給与所得が伸び悩んでいます。周りの先輩や上司からは、昇進すると「責任は増えるが収入は変わらない」とか、「管理職になったら残業代がつかないので手取りが減った」など、ネガティブな情報を得る機会が多くあります。責任を背負った分だけの対価が支払われないと分かれば、出世などしたくないと思うのは当然でしょうし、それが普通の感覚です。
また、フリーターは、目の前で多くの業務をこなし、疲弊している正社員の姿を毎日見ているとしたら「アルバイトの立場のままでいい」と考えるでしょう。
終身雇用を前提に働いていない
1つの会社に就職したら定年まで勤め上げる時代はずいぶん前に終わりました。10年以上前から新規就労者(大卒)の3割は、3年で離職してしまう状況が続いています。今の会社で昇進を目指すのではなく、転職してステップアップしている人が増えていることが分かります。
また、昇進して収入を増やさなくても、副業をして収入を増やすという選択肢もあります。無理をして出世をする必要がなくなっているのが実情なのです。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『人材マネジメント一問一答』(商業界)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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