人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2023年11月16日)
部下を正すときには、性格ではなく行動にフォーカス
部下を叱ることが苦手なマネジャーが増えています。部下に対して少しでも厳しい指摘をしてしまうと、最近では、「パワハラだ」と騒がれたりすることもあり、上司が及び腰になっているからでしょう。
しかし、部下のためを思って叱り、問題行動を正すことは上司の責務であり、叱るべきときにそのまま何もせずに見過ごしているのは、上司としての職務放棄と言われても仕方ありません。
ネガティブフィードバックという言葉があります。部下の問題行動を具体的に指摘し、改善を促すフィードバックのことです。このネガティブフィードバック、一部にはインストラクティブフィードバックとも呼ばれており、そもそも「ネガティブ」という言葉自体を使いたくないという企業は、こちらの方を使う傾向にあります。
ちなみに、インストラクティブとは、「有益な、ためになる、教育的な」という意味です(このコラムでは、あえてネガティブフィードバックという表現を使わせていただきます)。
ネガティブフィードバックは、相手にとって有益な内容であることが前提になりますが、ときに本人には耳の痛い部分もあったりするので、モチベーションを損なう表現は避ける必要があります。当然ながら、人格否定はNGです。
あくまでも部下の問題行動を正すのであり、性格への言及はパワハラになりかねません。性格が行動に影響を与えているのは紛れもない事実かもしれませんが、部下を正すときは「性格ではなく行動」というポイントだけは常に忘れないでください。
例えば、「お前は本当にどんくさいなあ。だから、会議に遅刻ばかりするんだよ」と指摘されても、言われたほうは身もふたもありません。じゃあ、どうすればいいのか、改善策もまったく分かりません。
「会議に行く準備を始めるのが遅いのが問題じゃないかな。そこを改善して5分前行動を心掛けようよ。重要な会議の10分前にはスマホのアラームをセットしてみたらどうだろうか?」というアドバイスなら、言われたほうも素直に受け入れて、具体案をやってみようという気にもなります。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。