同時期に入社した他のスタッフに比べて、仕事の覚えが悪く、作業スピードも遅く、ミスをすることが多い、一言で言えば、“要領が悪い”スタッフがいると、うまく業務が進められず、ストレスを感じますよね。
このタイプの仕事の取り組み方を観察していると、「無駄な動きが多い」ことが分かります。例えば、飲食業のスタッフで、料理を配膳したときに、手ぶらで帰ってくるのがこのタイプです。
本来は料理を配膳する際は、テーブルの上にある、空いているお皿やグラスを引いて、厨房へ戻ってくるのがあるべき姿です。また、そのときにお客さまへ「お飲み物の追加はいかがでしょうか?」と一言声を掛けることも併せて行います。
このように、業務を行う際、1つだけの作業で終わらせるのではなく、他にも同時にできることを見つけて行うことで、生産性を上げていかなければなりませんが、要領の悪いタイプはこれができないのです。料理を配膳する、空いている皿を下げる、飲料の追加オーダーを受けることを、1つずつ行うので、他の人の3倍の時間が掛かってしまうのです。どうすればいいのでしょうか?
正しいやり方を習得し、できることを増やす
どの現場でも、入社したらすぐに新人研修が行われますが、人手不足の状況が続く中で、教育の時間がどうしても短くなりがちです。研修で大枠を教えた後は「分からないことがあったら、その都度質問してね!」と言って、現場に立たせるケースが増えています。言わば、ぶっつけ本番ということです。
要領の悪いタイプは、総じて物事の習得スピードが遅い傾向にあります。かつての筆者自身がそうでした。それを自覚していたので分からないことがあれば、研修のときに分かるまで質問したり、何度もやり方を教えてもらったりして、なんとか同期に追いつくようにしていました。でも、今はなかなか、そういうことがやり難いというのが実情です。トレーナー役のスタッフも、研修以外の仕事を大量に抱えているので、できないスタッフに、付きっきりになってフォローすることができないのです。
そうなると、正しい業務のやり方を理解しないまま、仕事をすることになってしまいます。
新人には、「バディ」と私が呼んでいる、サポート役を付けることをお薦めします。バディは、新人とコミュニケーションを頻度多く取り、悩みや相談を受けるのが役割です。新人の状況を把握するため、短い時間(15分程度)でよいので、個別ミーティングを定期的に行い、現状を把握してトレーナーと連携を図ります。
分からないことが減り、仕事の正しいやり方を理解し、習得できていることが増えれば、要領の悪さは徐々に改善されていきます。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『人材マネジメント一問一答』(商業界)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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