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ヒトがあつまる職場/田中和彦

第1回「自分のアイデアが形になること」

企業は、ずっと同じ人たちで運営していくことはできません。人が辞めても、また入ってくる職場について考察します。(2024年4月18日)

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金銭的報酬だけでヒトは集まるわけではない

 就職や転職を考えている人に、「就職先として、どんな会社がいいですか?」と尋ねれば、「そりゃあ、給料の高い会社がいいですよ」と多くの人が答えます。誰だって給料の安い会社よりも給料の高い会社を希望するのは当たり前の話です。
 ただ、それは「仕事内容や待遇や職場環境が同じような場合」という条件が必ず付きます。

 残業が多く、急に休日も出勤しなくてはならないような職場だったら、「給料は高いかもしれないけど、絶対にイヤだ」というのが多くの人の本音でしょう。ヒトは金銭的報酬だけを基準に企業を選んでいるわけではありません。

 報酬には意味的報酬というものがあります。たとえ給料が低くても、そこで働くことでスキルや知識が身に付き、短期間で成長できる環境なら、自らそんな職場に飛び込んでいく人は少なくありません。
 それは、言い換えれば、「成長欲求を満たしてくれる」という報酬です。





 老子の有名なことわざに、「魚を一匹渡すより、魚の釣り方を教えよ」というものがあります。魚一匹もらっても、食べてしまえば何も残りませんが、魚の釣り方を教えてもらった人は、一生食いっぱぐれがなくなるという意味です。
 一時的に高い給料をもらうより、どこでも稼いでいけるだけの力を身に付けさせてもらえるのなら、それは何ものにも代えがたい貴重な報酬かもしれません。

 「ヒトがあつまる職場」には、必ずそういう意味的報酬が存在します。
 金銭的な報酬は、現場で勝手に増やすことはできません。人事部や会社の承認なしに、部下の給与や賞与の額を上げる権限など、現場の長にはないからです。その点では、金銭的報酬は、全社的に原資の決まった分配ゲームだともいえます。
 しかし、意味的報酬は、現場の力でいくらでも創出が可能になります。

 この連載では、金銭的報酬以外に何をアピールすれば、ヒトが集まってくれるのかを、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。


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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。
連絡先:info@planet-5.com
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