部下が上司へ悩みを相談してくるケースはまれです。多くは1人で問題を抱え込み、ストレスをため、モチベーションを下げ、最悪の場合は退職してしまいます。もしくは、心身を患う場合もあります。
私の周りでも、鬱を発症し数年間、休職することになった友人、知人が複数います。鬱を発症すると人によりますが、なかなか元の状態に戻ることができません。再発率も60〜70%と言われており、一生、病気と付き合っていくことになる場合も少なくないのです。
部下から「SOS」は来ない
部下から「SOS」のサインが来ないことを前提に、上司は、彼、彼女たちをよく観察し、こちらから歩み寄り語り掛けることが必要です。
具体的には、個別ミーティングの実施がお薦めです。年に1、2回行う給料査定のための面談とは異なり、2週間〜1カ月に1回の頻度で、定期的に上司、部下で膝を突き合わせて対話をする機会を設けて行います。
個別ミーティングを行うことで、部下の置かれている状況や考えていること、心身の状態、プライベートの情報を得ることができます。普段の職場から離れて、レストランやカフェで食事やお茶を飲みながら対話すれば、リラックスして話せるので本音が出やすくなります。
ただ、個別ミーティングを行っても、上辺だけの話で終始してしまうケースもあり、あまり価値を感じないという人もいます。それは、普段の関係性づくりができていないことが原因です。人間関係がきちんとできていれば、個別ミーティングは十分機能します。
効果的な個別ミーティングの進め方
個別ミーティングを始めた方から、部下に「何か問題はないか?」と質問しても「特にありません」としか返事がなく、ミーティングが続かないという悩みを時々お聞きします。
上司に悩みを打ち明けると「“できない部下”とレッテルを貼られてしまうのではないか?」「昇進に悪影響を及ぼすのではないか?」と考えてしまうので、「問題ない」と答えるのです。そこで事前に、前回のミーティングから、その日までに取り組んだことの振り返りや自身の近況、その日に話したいことについて、簡単にレポートを作成してもらうことをお薦めします。口頭で聞くのと違い、紙に記入してもらうと、問題や悩みを打ち明けてくれやすくなります。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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