自分の感情よりもお客様の感情を大切に
クレーム対応は、常に受ける側に落ち度があるとは限りません。話を聴いて、状況を確認した上で、こちらには「過失がない」と判断できることもあります。
ここで気をつけないといけないのは、感情的になり、その気持ちが顔に出てしまうことです。一時の感情的な気持ちを言葉にしてしまい、お客様との関係がギクシャクすることになると、次に利用してもらえる機会を失うことにもなりかねません。仕事をする上では、自分の感情よりも、お客様の感情をおもんぱかることが大切だと思います。
気遣いのない対応で怒らせてしまう
あるオフィスビルの管理をしている守衛室にクレームが入りました。このビルに勤めている女性からの電話で、「オフィスのエアコンが寒いのよ! 何とかしなさいよ!」というものでした。実はこのビルのオフィスの温度は、全館同じ温度に設定されており、他のフロアからは特に同じクレームは入っていません。
こちらには「過失はない」と思った対応者は「特に他からはそのような指摘はなかったですけど」と声だけでもムッとしているのが分かる、気遣いが感じられない対応をしてしまったところ、女性をさらに怒らせてしまい、クレームが必要以上に長引いたようでした。
このような過失がないようなケースこそ、気遣いを見せる対応を心掛けてもらいたいと思います。まずは、「ご不便をおかけしているようですね。申し訳ございません」と謝罪し、「室内全体が寒い状況ですか? 風が直接当たっている状況ですか?」と状況を確認することもできると思います。
その上で、室内全体が寒いということが分かったとしたら、「寒いと、仕事に支障を来したりしますよね」と気遣いの言葉を投げかけることもできるのではないでしょうか。その上で、温度設定は全館同じであることを伝え、温かい飲み物やブランケットで寒さをしのいでいただくことなどを提案してみれば、相手も嫌な気持ちにならず、理解してくれるのではないかと思います。
●文/谷厚志(たに あつし)
“怒りを笑いに変える”クレーム・コンサルタント。一般社団法人日本クレーム対応協会の代表理事。
学生時代より関西を拠点にタレントとして活動。芸能界を引退後、会社員としてコールセンターやお客さま相談室のクレーム対応責任者を歴任。2,000件以上のクレーム対応に接し、クレーム客をファンに変える独自の対話術を確立する。2011年、クレーム対応のコンサルティング会社を立ち上げて独立。圧倒的な経験知と人を元気にするトークが口コミで広がり、年間200本以上の講演・研修に登壇する。著書に『損する言い方 得する言い方』(日本実業出版社)、『失敗しない! クレーム対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『ピンチをチャンスに変えるクレーム対応術』(近代セールス社)など。フジテレビ「ホンマでっか?TV」、日本テレビ「ZIP!」など、メディア出演多数。
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