スタッフの定着率を上げるには『採用の在り方、やり方』を変えることが効果的です。ただ、人手が足りない状況が続くと、例えば、飲食店なら“料理を配膳してくれるだけでよい”、物販の店舗なら“レジを打ってくれるだけでよい”、事務所なら“パソコン入力をしてくれるだけでよい”と思い、求人の応募者を「来るもの拒まず」のスタンスで採用してしまうことがあります。
私自身、セブンイレブンのFC店を経営していたとき、スタッフの数がそろえば、何とかなるだろうと考え、十分に吟味しないままの採用を続けていた時期がありました。でも、『頭数合わせの採用』をすると、本来は採るべきではない人物が現場に入ってくることになってしまいます。結果として、現場が混乱することになりましたし、既存のスタッフとの人間関係がうまく築けないので、そういう人物は長く続くことはありませんでした。
頭数合わせの採用はしない
そんなことが何度か続いたので、「頭数合わせの採用」は絶対にしないと心に決め、本当に必要な人のみ採用することにしたのです。結果、人材の質、定着率ともにグンと上がった経験があります。
このことを、私が登壇するセミナーの会場で伝えると、「求人難の状況で、そんなことをしていると、まったく人が集まらなくなるので無理だ! 机上の空論だ!」と言う受講者もいます。そのときに私は、『(言葉が少しきついですが…)仕事ができない人材ばかりがそろうと、既存のスタッフに負担がかかるし、顧客にも迷惑が掛かる。そして、一番困るのは上司、経営者自身である』と伝えています。
もし、飲食店で配膳はできるけれど、不愛想な態度やお客様に対して失礼なことを平気でしてしまうスタッフがいれば、感じが悪い店だと思われるので、二度と利用しなくなってしまうでしょう。それが続けば売上が下がります。出勤するとミスばかり連発するスタッフがいると、一緒に仕事をしているスタッフの足手まといになります。正直言って、そういう人ならいない方が現場はうまく回るのです。
必要な人物像を明確にする
「辞めない人」で、かつ「仕事ができる人物」を採用するには、自社に「どういうスタッフが必要なのか?」について、明確にすることから始めましょう。具体的には、性格、ライフスタイル、職歴、必要であれば学歴・資格の有無、価値観、興味、話し方、仕事観、容姿、雰囲気、行動(立居振る舞い)などについて、一つずつ言語化していきます。「こんな人と一緒に働きたい」と思える人物像を明文化するということです。
難しければ、「こんな人とは働きたくない」と考えてもよいです。そこでまとめた文章を、求人広告に「自社が求める人物」として掲載すれば、それにマッチする人の応募が増えます。そして、採用面接の際に、「求める人物像」と照らし合わせていけば、合否の判断が迷わずに行えます。
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●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
https://okamotofumihiro.com/