上司、経営者が部下に与える影響は大きく、モチベーションの維持や離職率の高低につながる場合が多いと言えます。求人難の時代になり、人材の確保が難しく、かつ、若い世代の流出が激しい状況の中で、上司、経営者は「この人のもとで働き続けたい」と部下から思われる存在になることが求められます。そうなるための第一歩として、「部下が上司に何を求めているのか?」を把握することは欠かせません。
Z世代の理想の上司
産業能率大学総合研究所が、2024年度に就職した新入社員(563人)を対象に「理想の上司」を調査した結果によると、今の若い世代が上司に求めることは「常に部下を気にとめてくれる」「細かくサポートしてくれる」「プライベートなことでも相談できる」の項目が上位でした。
理想の男性上司の第1位は「大谷翔平選手(メジャーリーガー)」で、女性上司は「水卜麻美さん(テレビ局アナウンサー・管理職)」でした。どちらも、トップダウンでグイグイとチームを牽引したり、厳しく指導したりというリーダーシップを取るタイプではありません。10年ほど前のランキングでは、松岡修造さん、天海祐希さんが、それぞれ1位となる年が複数回ありました。理想の上司像のキャラクターが現在と大きく異なることから、若手社員が上司に求めることが変化していると分かります。
では、部下に「この人のもとで働き続けたい」と思わせるために、どうすればよいのでしょうか? 心得ておくべきことをご紹介しましょう。
部下のモデルになると心得る
部下は自分の10年後のロールモデルとして上司を見ています。例えば、上司が毎日ため息をついて、つらそうに仕事をしていたとしたら、「この会社で働いていてよいのだろうか?」と不安になってしまいます。将来の自分の姿として捉えるとしたら、当然のことでしょう。
逆に、生き生きと楽しそうに業務に取り組んでいたとしたら、未来は明るいと思えるでしょう。10年後に、自分もこういう上司になりたいと思えます。上司の役割は、部下にとって、前向きな未来像を示し、安心感と希望を与えることにあります。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『仕事のできる人を「辞めさせない」15分マネジメント術』(WAVE出版)、『人材マネジメント一問一答』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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