社会福祉法人 聖隷横浜病院/職員が働きやすい環境づくりで、人材の拡充と黒字経営を実現
職員満足度の高い病院づくりを目指し、さまざまな働き方を選べる制度を導入した聖隷横浜病院の事例をご紹介します。
深刻化する人手不足
現在、雇用市場では人手不足の問題が持ち上がっている。少子高齢化による人口の減少という構造的な要因に加え、景気の回復基調によって人材の奪い合いが起きているためだ。某大手外食チェーンでは人手不足の影響により、一部の店舗が営業時間の短縮や休業に追い込まれた。こうした状況は飲食業や小売業、運送業、建設業などに広がっているという。人材を確保するため、各社が非正規社員の正社員化や待遇の改善など、さまざまな施策を打ち出している。
そんな中、早くから人材の確保に取り組んできた業界がある。長年、医師や看護師の不足が課題となっている医療業界だ。不足要因として業務過多や絶対数が足りていないことなどが言われているが、人材確保のため、医療機関はさまざまな取り組みを行っている。2003年、国立横浜東病院から経営移譲を受けて開院した聖隷横浜病院もその1つだ。
聖隷横浜病院 病院長 岩崎滋樹さん
職員が働きやすい環境づくり
横浜市保土ヶ谷区にある同院は現在、地域の基幹病院として大きな役割を担っているが、開院当初は厳しい状況だった。病床数350床に対して常勤医師が22人しかおらず、初年度は7億円の赤字を計上するという苦難のスタートとなった。
2007年に就任した現病院長の岩崎滋樹さんは、そうした状況を打開するため、職員満足度の高い病院づくりを目指し、さまざまな施策を講じてきた。岩崎さんは言う。
「病院機能を改善させるためには、医師を充足させることが最重要でした。そのために、まず職員が働きやすい環境を整えることにしました。そうすれば人が集まり、定着し、よりよい医療を提供できるようになると考えたのです」
女性医師の復職支援
職員満足度の高い病院づくりのため、同院がまず導入したのは医師ジョブシェア制度である。これは常勤医師1人分の仕事と責任を2人で分担するというものだ。雇用形態は常勤の正職員で、週3回の日勤と週1回のオンコール(急患時の対応役として待機していること)、もしくは当直によって週30時間程度の勤務を行ってもらう。給与は規定金額の6割相当だが、健康保険や福利厚生などは一般の常勤職員と変わらない。
「制度の目的は、女性医師の復職支援です。医師不足を補うため、出産や育児などで現場から離れた女性医師の掘り起こしを考えました。彼女たちが職場に復帰しやすいように、柔軟な働き方ができるようにしたのです」
制度を作った背景として、女性医師の増加がある。近年、医師国家試験の合格者の約3割は女性だという。そのため年々、医師の総数に占める女性の割合は増えているが、それに伴って新たな課題が持ち上がっていた。
一般に女性の就業状況は出産・育児期にいったん低下し、育児が落ち着くと再び上昇するというM字カーブを描くことで知られている。こうした傾向が医師においても見られるようになり、特にマンパワーを必要とする現場で医師不足を助長していた。
※次ページ以降の閲覧には、会員登録(無料)が必要です
●社会福祉法人 聖隷横浜病院
所在地/神奈川県横浜市保土ヶ谷区岩井町215
開院日/2003年3月1日
常勤職員数/503人(2014年4月1日現在)
ホームページ/ http://www.seirei.or.jp/yokohama/
この記事のキーワード
クリックすることで関連する記事・データを一覧で表示することができます。
一覧ページへ戻る
その他のコラム記事を見る