内定獲得で成長した学生
新卒採用をテーマに市場動向や学生の意識、企業の取り組みなどについて解説します。
終盤に向かいつつある2016年卒の新卒採用は、昨年に引き続き、好況傾向だったことなどから売り手市場にありました。そのため、強引なやり方で内定者を確保しようとする企業もあり、問題化しました。いわゆるオワハラ(就職活動終われハラスメント)で、今年の流行語大賞にもノミネートされました。
オワハラとは、採用面接で学生に「今、選考中の企業に電話をして辞退をすれば内々定を出す」という交換条件を突き付けたり、「うちの内定をとったら就職活動は終了するよね?」という強制的な終了確認を取るなどの行為を指します。
アナウンサー内定取り消し
昨年は就職活動を終わらせるのではなく、内定を取り消した企業の問題がマスコミをにぎわせました。テレビ局のアナウンサーに内定した女性が、銀座のクラブでホステスのアルバイトをしていたことを理由に、採用を取り消されたケースです。女性は大学4年次の5月に一方的に内定を取り消され、その理由を不当として提訴しました。その後、女性とテレビ局の間では和解が成立しました。
学生の内定辞退は法的に認められていますが、内定取り消しは解雇に相当するため、企業が自由にできるわけではありません。客観的合理性と社会的相当性が認められなければ、解約権の濫用として無効となります。
取り消しでは、こんなケースもあります。Aさんはある企業から内定を得ましたが、後日取り消されてしまいました。理由は、履歴書に虚偽の記載があったというのです。それは性別でした。はた目にはAさんは男性に見えましたが、戸籍上は女性だったのです。Aさんは性同一性障害で、物心がついたときから違和感を覚え、苦しんできたといいます。
その後、Aさんは性同一性障害である自分を受け入れてくれる企業に内定し、無事就職を果たしました。
学生を認めること
内定は学生の成長につながることもあります。高校生のころからインターネットに興味を持っていたBさんは、IT業界を志望していました。就職活動ではIT企業に絞って活動していましたが、内気なBさんは人とのコミュニケーションが苦手な面があり、なかなか選考に残ることができませんでした。そして活動を続けた結果、ようやくある企業から内定を得ました。
その企業では内定者が希望すれば、アルバイトをすることができます。Bさんはアルバイトを希望し、その企業で働き始めました。人事担当者によれば、選考段階でのBさんは積極性に欠ける面があるとされ、採否は迷った末での決断だったそうです。ですが、内定を得て、自分に自信が持てるようになったBさんは積極的に仕事に取り組んでおり、社内でも高評価を得ているそうです。
マネジメントでは、相手を認めることの大切さがよく言われます。人は誰でも認められたり、褒められたりすると、能力を発揮するものです。それは学生も同じだと思います。
●株式会社アイデム
文/三宅航太(人と仕事研究所)
監修/相良忠義(JOBRASS & Smart ディヴィジョン・キャリアコンサルタント)
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