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これからの人材活用(2012年4月〜2013年3月)

第7回 事例研究/中国人38人を“技能実習生”で受け入れ〜互いが「ハッピー!」なわけ〜(岡野食品産業)

雇用の現場に接していて、今、一番よく聞く悩みは、「採用できない」。求人募集をかけても、応募者がいない、少ない。あるいは、応募者と面接しても、採用したいと思える人材に出会えない、――といった具合です。
この問題を、20〜30代前半の中国人女性を技能実習生として受け入れることで、大きく解消した企業があります。姫路の食品製造・販売会社、岡野食品産業です。
技能実習生は、本人が失踪し不法就労につながったり、在職中に犯罪を犯すなど、問題も多く指摘されています。雇い入れる側が、「外国人技能実習制度」の本来の目的意識を持っていなかったり、また最低賃金以下で働かせるなど、違法行為も指摘されています。
そんななか、岡野食品産業が、「受け入れは大成功だった」と胸を張る理由は? そのコツは? について、今回は迫ります(取材・文・写真 アイデム 人と仕事研究所 所長 平田未緒)

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 「採用できない」問題は深刻です。どんな職場でも、必要な数の「人」がいなければ、仕事が回っていきません。

 その仕事が、労働集約的である場合、深刻性はさらに増します。実際に数年前、パート・アルバイトの採用難がひどかったとき、東京都心部のファミレスでは深夜営業を停止したところがありました。「人が足りず、店が開けられない」、が理由です。

 採用難は、時給の高騰も招きます。「時給アップ」は、応募を増やす有効な手段の1つであり、これが急速に激しくなってしまうのです。

 例えば今、あるファストフード・チェーンでは、東京の新宿・渋谷など繁華街にある店で、日中の募集時時給を1500円近くに設定しています。深夜時間帯の時給を、法律で定められた25%を超える割増率に設定している店もあります。他店同様、法定どおりの割増賃金を提示していては応募者が集まらない、というわけです。

 ここまで時給を上げると、人員態勢を見直したり、飲食店なら集客や回転数や作業効率を上げるなど、労働生産性を高めていかなければ、利益が得られません。一方、そうした店の周辺他店は、この高額時給に対抗して、採用合戦を闘うことになります。
 
 採用難は、首都圏に限ったことではありません。人口の少ない地方の町の郊外に、巨大ショッピングモールができたりすると、通勤圏を同じくする企業同士の、同業・異業を問わない「人」をめぐる攻防戦が、突然、勃発するのです。

 こうした事態が、今、日本のあちこちで起こっています。戦いは、パート・アルバイトのなり手が「ここで働きたい」と思い、雇う側が「この人に働いてほしい」と思う状況が同時に起き、かつそれが継続しなければ、終わりません。

 この攻防戦に参戦しつつ、「全く違う土俵」にも乗ることで、人の充足に成功した企業があります。兵庫県姫路市の食品製造・販売会社、岡野食品産業です。

 なぜ、成功できたのか。その方法は? ・・・について、詳しく聞いてみました。


「募集しても応募がない!」状況の救世主

 
岡野食品産業は、兵庫県姫路市に本社を置く、食品製造・販売企業。
 「コンセルボ」などのブランド名で、焼きたてパンの店をフランチャイズ展開しているほか、食パン・菓子パン・フランスパン・サンドイッチなどを本社敷地内の工場で焼き上げたり加工して、スーパーなどに卸している。

 その工場長であり取締役の藤原富雄さん(写真)は、嘆息する。

  「最近は、募集しても、ほとんど応募がないんですよ。実際、パンの製造工場は、夏はものすごく暑いし、冬は底冷えがして、働きやすい環境とは言えません。それでも以前は、新聞折込求人チラシに一度広告を掲載すれば、20〜30人ほどは応募がありました。それが今や、2地区同時に掲載しても、応募は5人程度です」

  藤原さんは、同社に新卒で入社後、営業、システム開発を担当し、1997年に総務部に異動。人事部長になり、昨年工場長になるまで14年間、人事・採用に携わった。

 その藤原さんが、「ここまで、採用できなかったことはない」と言う。人手不足を補うため、時間単価の高い人材派遣をやむなく頼んでも、定着しない。

  「求職者の考え方や、価値観が、急に変わってしまったかのようにも感じます」と、藤原さん。だからこそ「あのとき、思いきって挑戦してよかった」と、今になり心底思っていることがある。「外国人技能実習制度」の活用だ。

 「現在、中国人の技能実習生を38人受け入れています。もはや、彼女たちの力なくして、操業することは考えられません」

 

若手中国人女性“技能実習生”を受け入れる


 外国人技能実習制度は、国の制度である。外国人が日本での就労を通じて技能を習得、帰国後に日本で培った能力を母国で発揮し、自らの職業生活を向上させたり、自国の産業・企業の発展に貢献するのが目的だ。

  そのため、期間は最長3年。受け入れ先の日本企業とは雇用契約を結び、日本の労働法が適用される。

  「今、うちで雇用しているのは、20歳前後から上は30代半ばの既婚者まで、全員が中国人女性です。中国側の送り出し企業は菓子・パンメーカーで、当社の厳しい衛生管理や品質管理、最新の機械を導入しての生産性向上などを学びつつ、しっかり働いてくれています。日本人同様、人により得手不得手はありますが、正確さとスピードが求められる二次加工などの手作業も、日本人と遜色ありません」

  何より助かるのは、残業や休日出勤をいとわず、日本の主婦パートがこぞって休みたがる年末年始やお盆などにも、喜んで出勤してくれることだという。密度濃く働き、しかもほぼ全員が、最長3年の期間を全うして帰るため、熟練度合いも極めて高い。

 ちなみに、期限を待たずに帰国したのは、1人だけ。それも、入院を要する病気になり、母国に帰した方がいいと藤原さんが判断したからだ。

  「日本人は、失業率が低いわけでもないのに、ギリギリまで時給を上げても、応募してこないのです。その分を、彼女たちに担ってもらっている格好です。外国人技能実習制度の本来目的から考えれば、こうした感想は不適切と言えるかもしれません。しかし、私は今や『技能実習生』としての就労可能期限を、現行の3年から、5年に延長してはどうか? とすら思っています」


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岡野食品産業株式会社
所在地(本社)/兵庫県姫路市御国野町国分寺391
創業/1948年
従業員数/600人
資本金/6500万円
売上高/60億円 (2010年3月期)
事業内容/食パン・菓子パン・フランスパン・サンドイッチ・洋菓子などの製造・販売
ホームページ/http://www.okano.co.jp

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