人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2021年7月15日)
学びとは、場数を踏み、量をこなすことで身についていくもの
人は何かを学ぶときには、多くの場合、次のような4つのステップを踏むといわれます。
■第1段階 何が分からないのかすら、分からない
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■第2段階 分かるけど、できない
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■第3段階 意識すれば、できる
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■第4段階 意識しなくても、できる
第1段階の「何が分からないのかすら、分からない」というのは、学ぼうにも手掛かりさえつかめないという感じです。海外に留学した人が、初めて外国語の授業に参加して、さっぱり内容が理解できないという状況を想像してみてください。文系の学生が、物理学や難しい数学の授業に出席したという感覚かもしれません。まったくのお手あげ状態ということです。
第2段階は、「分かるけど、できない」です。「分かる(=理解)こと」と「できる(=実践)こと」は、根本的に違います。頭では理解していても、やってみると思いどおりに体が動かないというのは、実際によくありますよね。
第3段階が、「意識すれば、できる」。やっと実践が伴うようになった状態です。しかし、まだ完全に自分のものになったわけではありません。
そして、最後の第4段階が、「意識しなくても、できる」です。頭で考えなくても、自然に体が動くという感じですね。場数を踏み、量的な経験を積んでいくうちに、学びというものはおのずと身についていきます。こういう状態になることを、「習慣になる」といいます。習慣にさえなれば、もうこっちのものです。
日本には、「守破離」という言葉があります。武道や芸の道での、修行における順序段階の教えです。
「守」は、師の教えを忠実に守り、ひたすら基本を身につける段階です。この部分では、自分の考えなどをへたに持たないことが大切だといわれています。「破」は、基本形という殻を破り、躍進する段階です。今までの教えを基礎としつつも、自己の創造性を働かせ、自分らしい個性を発揮していくことになります。「離」の段階で、自由闊達(かったつ)な境地に移行します。1つの形や流儀流派にとらわれることなく、思いのままに行動し、本当の「自分らしい」形が完成するのです。
この「守破離」にも通じる考え方ですが、大切なことは、まずは数や量をこなすということです。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。