人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2021年12月9日)
「雑談に意味があるのでしょうか?」
ここ2年間くらいで、本当に多くの企業が「1on1(ワンオンワン)面談」を導入してきています。このコラムの前身である「マネジメント相談室」でも、1on1面談について、どういうものかについて、お答えしたことがありました。
そのときは、まだ多くの会社が導入し始めたばかりのタイミングで、そこまで突っ込んだ質問内容ではありませんでしたが、最近は、それなりに実施した経験のある方から、管理職研修などの場で1on1面談について、いろんな質問が出てきます。
今日は、そんな質問についてお話いたしましょう。
あらためて1on1面談を簡単に説明すると、例えば月に数回など、定期的に30分から1時間程度の上司と部下の1対1形式の面談のことで、人事考課面談や目標設定面談、キャリア面談のように明確な目的があるわけではなく、仕事や職場の人間関係についての悩み相談、上司に知っておいてほしいこと、プライベートについてなど、どんなテーマ設定で話をしてもいいものです。
「最近どう?」で会話を始める人も多く、かなり自由な面談ともいえます。それ故に、雑談の延長のように感じられる人も少なくありません。
それで、よく出てくる質問が、「田中さん、雑談的な内容でもいいとよく言われるんですが、雑談に本当に意味があるんでしょうか?」というものです。先日もある管理職の方からこの質問が出たので、私が逆に「具体的に、どんな雑談が多いんですか?」と尋ねると、「たいていゴルフの話です」との返事。
「ああ、部下の方はゴルフが好きなんですね?」と聞くと、「いえ、部下はゴルフはしません。私のほうがゴルフの話をしてあげてるんです」とのことで、これにはビックリしてしまいました。面談の意義をまったく理解されていなかったからです。
1on1面談は、「部下の話を上司が聴く」ということが原則で、上司と部下の間で、ものが言いやすく、風通しの良い風土を形成するには、自由なコミュニケーションこそが必要だという考えから制度化されてきたものです。興味のないゴルフの話を上司から一方的に聞かされたのでは、部下の方のほうが、「こんな面談に意味があるのか?」と思ってしまいます。
1on1面談は、雑談自体に意味があるというより、雑談的な会話を通して、上司と部下の距離が近づくことこそが重要なのです。
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●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。