人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2023年2月22日)
「リーダーシップは必ずしも1人だけが発揮するものではない」という考え
前々回の連載では、近年注目を浴びているリーダーシップ論の1つであるサーバント・リーダーシップについてお伝えしましたが、今回は、サーバント・リーダーシップと同じように最近よく語られるようになってきたシェアド・リーダーシップについて、説明したいと思います。
従来のリーダーシップ論では、リーダーという存在は組織のトップに位置し、1人で固定されていることを前提としがちでした。しかし、シェアド・リーダーシップの考え方は、「リーダーシップは必ずしも1人だけが発揮するものではなく、その場の状況に応じて局面ごとに移行し、入れ替わりもする。強い組織は、メンバー全員がリーダーシップとフォロワーシップを相互に影響し合いながら、共通のゴールに向かっている」というものです。
ある仕事においては、その業務に必要なスキルや知識を持った人材がリーダーシップを発揮し、他の人たちはフォロワーに徹します。ただ、まったく別の要件が必要になった場合は、その要件にふさわしい人物が今度はリーダーになり、それまでリーダーだった人もフォロワーに回るというわけです。
リーダーとフォロワーが流動性を持ってクルクルと変化していくことが特徴で、多様な価値観や才能を持った人が集まる組織では、固定化されたリーダーだけがリーダーシップを発揮するよりも、時と場合に応じて全員がリーダーシップとフォロワーシップの両方を発揮するほうが機能しやすいともいわれています。
ところで、フォロワーシップとは一体どのようなことをいうのでしょうか?
リーダーシップについては、至るところでさまざまな考え方が語られていますが、フォロワーシップについては、それほど多くの情報を持っていないというのが、正直な感想だと思われます。
言葉の意味だけを捉えると、リーダー【Leader】は、リードする(【Lead】=導く)に【er】が付いているので、「導く人」と訳せます。一方のフォロワー【Follower】は、フォローする(【Follow】=従う)に【er】が付いているので、「従う人」となります。
言語的には対極の考え方になりますね。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。