人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2023年5月25日)
「5月病」が、5月だけに限らなくなった理由
5月のゴールデンウィークが明けると、新入社員の中に、やる気が出ず、倦怠感などに襲われ、会社に出社する意欲が湧かなくなるという人が出てきます。いわゆる「5月病」と呼ばれるものです。医学的には、適応障害やうつ病と診断されることもあります。
そんな話をすると、最近では「田中さん、うちの会社じゃ、新人に限らず、もう年中病ですよ」みたいな声が少なからず返ってきたりします。そういう時代なのかもしれませんね。
新入社員の場合、入社後に緊張感で張りつめていたものが、少し長い休みによって、プツンと糸が切れたような状態になるわけですが、緩んだ糸をもう一度ピンと張るのはなかなか難しいものです。

休暇中に、「今のこの仕事にどんな意味があるんだろう?」「自分はなぜこの仕事をしているんだろう?」「目の前の仕事は、自分に本当に向いているんだろうか?」など、仕事や働くこと自体に根本的な疑問を抱きがちなのです。
若い部下の「自分の担当する仕事にどんな意味があるのか?」という疑問に対して、「そんなことグダグダ言ってないで、とにかく言われたことをやればいいんだよ」というアプローチでは、部下は立ち直るどころか、ますますモチベーションを下げてしまいます。
とりわけZ世代の新入社員は、上司や先輩たちからの高圧的な態度、精神論や理不尽な要求に対しては、あからさまな拒絶態度を示す傾向があります。また、社会問題にも高い意識があるため、「自分の仕事がどう社会に影響を与えるか?」「世の中にどう貢献できるのか?」などへの関心が強く、仕事の意義や目的を伝えることが、大きな動機付けになるのです。
もしかしたら「5月病」が、5月だけに限らなくなったのは、上司が部下に対して、しっかりと仕事の意義や目的を伝えていないからかもしれません。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。