目の前で起こる問題に対して、「逃げる」タイプがいます。例えば店舗のスタッフであれば、店内の通路が汚れていることに気づいているけれど、見なかったことにして通り過ぎてしまう人です。自分が掃除をすることになるのが面倒だし、時間が掛かるので嫌だと思うからでしょう。
同僚が困っているのを知っていながら、気づかないふりをしている人もいます。下手に「手伝おうか?」と言って声を掛ければ、自分の仕事が増えるので、スルーしているのでしょう。
また、周りから何か苦言されたり、間違いを指摘されたりした際に、その場をしのぐために適当な言葉(嘘)を並べて、その場をやり過ごす傾向がある人なども同タイプです。そういう生き方をしている人は、自分では周りには「気づかれていない」と思っているかもしれませんが、実際にはそれとは逆に、すべてお見通しと言う場合が多いのです。そうなると、信頼がおけない人、当てにできない人と言うレッテルを貼られてしまいます。重要な仕事を任せられることもないでしょうから、当然ですが評価も下がります。
上司はリスペクトされる存在
このタイプが何かの間違いで、リーダーの立場になったとしたら、初めのうちは、耳触りのよいことを言って、部下に慕われるかもしれません。そういう人は往々にして口は達者であるケースが多いからです。でも、徐々に化けの皮が剝がれていき、気づけば周りに誰もいなくなってしまいます。部下から見放されてしまうということです。
大昔の話で恐縮ですが、私が学生時代にレストランでアルバイトをしていたときに、移動してきた店長がこのタイプでした。クレーム対応や汚物の処理など、面倒な仕事をすべて、スタッフに押し付けていました。私を含め、ほとんどのスタッフが、店長が交代して数カ月たたない間に辞めてしまいました。その後、店の店頭から求人ポスターがなくなることはありませんでした。
本来、上司はリスペクトされる存在でなければなりません。そうでないと、マネジメントが
うまく機能しないからです。多くのことから逃げる姿勢でいる上司のことを尊敬する部下はまずいません。もし、読者の中に、自分にもそういう傾向が少しでもあると思われたならば、今すぐ「逃げる」ことをやめましょう。
●文/岡本文宏(おかもと ふみひろ)
メンタルチャージISC研究所株式会社代表取締役、繁盛企業育成コーチ
アパレル店勤務、セブンイレブンFC店経営を経て、2005年メンタルチャージISC研究所を設立。中小企業経営者、エリアチェーンオーナー、店長などに向けた小さな組織の人に関する問題解決メソッドや、スタッフを活用して業績アップを実現する『繁盛店づくり』のノウハウを提供している。『人材マネジメント一問一答』(商業界)、『店長の一流、二流、三流』(明日香出版)、『繁盛店のやる気の育て方』(女性モード社)など著書多数。
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