人材育成や評価、意思決定など、マネジャーにはさまざまな役割が求められます。マネジャーに必要な視点や考え方、心の持ち方などについて考察します。(2023年12月14日)
人類の組織化の原点は危機管理(リスクマネジメント)
人間のみならず、多くの生き物は組織的な動きをしています。
なぜ生き物が組織的な動きをするかというと、あらゆる生き物の究極の目的である「種の保存」のため、つまり生き延びるために不可欠なものだからです。
生存の前提となる食料確保のためには、組織的に動いたほうが多くの食べ物を手に入れることができます。人間にとっての狩猟や農耕も、1人で行うより多くの人と役割を分担して行動したほうがより多くの結果が出るからです。
また、危機管理(リスクマネジメント)も、組織化の大きな理由になるでしょう。地震や洪水が起きたり、動物や敵が襲ってきた場合、生き延びるためには逃げなくてはなりません。
例えば、100人程度の村があったとして、その村のトップである村長が1人で100人を連れて逃げるのは現実的ではありません。誰が逃げ終えているのか、逃げ遅れているのか、その把握すらできないからです。
そんな場合は、たいてい10人程度のグル―プに分けて、それぞれのグル―プの中にリーダー的な存在を任命し、「あなたは、自分を含めてこのグループの10人を連れて逃げなさい。逃げ終えたら点呼して、全員いることを確認し、村長である私に報告してください」というルールを徹底します。
こういう手段によって、組織はまとまり、村長も全体を統率することが可能になるわけです。
そういう点では、危機管理(リスクマネジメント)は、人類の組織化の原点なのかもしれませんね。
世界各国、究極の危機管理組織は軍隊です。軍隊という組織は一般的に非常にユニークな教育システムを持っていて、昇進したら、昇進した階層のさらに一つ上の階層のトレーニングを即座に実施するということが不文律的に行われています。
具体的には、大佐、中佐、少佐という階層があったとして、少佐に昇進した人は、すぐに中佐のトレーニングを行うということです(少佐のトレーニングは、すでに下の階層時に行われているということです)。
なぜ軍隊では、一つ上の階層のトレーニングをすぐに行うのでしょうか? あなたも考えてみてください。
●文/田中和彦(たなか かずひこ)
株式会社プラネットファイブ代表取締役、人材コンサルタント/コンテンツプロデューサー。1958年、大分県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、人材サービス関連企業に入社し、情報誌の編集長を歴任。その後、映画配給会社のプロデューサー、出版社代表取締役を経て、現在は、「企業の人材採用・教育研修・組織活性」などをテーマに、“今までに2万人以上の面接を行ってきた”人材コンサルタント兼コンテンツプロデューサーとして活躍中。新入社員研修、キャリアデザイン研修、管理職研修などの講師や講演は、年間100回以上。著書に、『課長の時間術』『課長の会話術』(日本実業出版社)、『あたりまえだけどなかなかできない42歳からのルール』(明日香出版社)、『時間に追われない39歳からの仕事術』(PHP文庫)、『仕事で眠れぬ夜に勇気をくれた言葉』(WAVE出版)など多数。